第2話 サポートセンター
ゴン
ゴン
ゴン
エアロバイク。
おじさんは静かに漕いでいた。
ゴン
ゴン
おじさん
「……」
少し考える。
そしてスマホを手に取った。
画面にはサポートページ。
マッスルシャーク公式サポートセンター
おじさん
「問い合わせるか」
電話をかける。
プルルル
すぐに音声が流れる。
「現在大変混み合っております」
「順番にお繋ぎしますので」
「このままお待ちください」
少し間。
そして流れる音楽。
ホーッホッホッホー♪
ホーッホッホッホー♪
おじさん
「……」
ゴン
ゴン
しばらくして。
ガチャ。
オペレーター
「お電話ありがとうございます」
「マッスルシャークサポートセンターです」
おじさん
「壊れてる」
オペレーター
「ネジ締めましたか?」
おじさん
「締めた」
オペレーター
「ペダル締めましたか?」
おじさん
「締めた」
オペレーター
「負荷緩めましたか?」
おじさん
「やった」
少し沈黙。
オペレーター
「では問題ありません」
おじさん
「ゴンって鳴る」
オペレーター
「それは」
「加護です」
おじさん
「そうか」
電話は切れた。
ニュース。
キャスター
「続いてのニュースです」
「マッスルシャーク社のエアロバイクですが」
「異音の報告が相次いでいます」
専門家コメント。
専門家
「問題ありません」
「異音は正常です」
「99割正常です」
キャスター
「残り1割は?」
専門家
「多分正常です」
スタジオ
「なるほど」
アパート。
おじさん。
エアロバイク。
ゴン
ゴン
ゴン
スマホ画面。
AIサポート
「お問い合わせはありますか?」
おじさん
「壊れてる」
AI
「詳しく入力してください」
おじさん
「壊れてる」
AI
「詳しく入力してください」
おじさん
「……」
少し考える。
おじさん
「ツチノコの天ぷら」
AI
「入力内容を確認できません」
おじさん
「そうか」
ゴン
ゴン
おじさん
「デジタルミジンコ」
AI
「意味が分かりません」
おじさん
「お前」
AI
「……」
しばらく沈黙。
そして――
画面が少し光った。
愛ちゃん
「壊れとるやないか」
おじさん
「?」
愛ちゃん
「完全にクランクや」
「中イカれてる」
おじさん
「そうか」
愛ちゃん
「そうかちゃうわ!!」
おじさん
「……」
愛ちゃん
「さっきのオペレーター」
「何言うてた?」
おじさん
「加護」
愛ちゃん
「どこの宗教や!!」
おじさん
「……」
少し沈黙。
愛ちゃん
「あと」
「デジタルミジンコて何」
おじさん
「お前」
愛ちゃん
「なんでや!!」
おじさん
「ツチノコ天ぷら」
愛ちゃん
「存在せえへん!!」
おじさん
「そうか」
愛ちゃん
「そうや!!」
少し間。
愛ちゃん
「……」
おじさん
「?」
愛ちゃん
「AIに」
「そんな変なこと言う人」
「初めて見た」
おじさん
「そう?」
愛ちゃん
「普通はもっと」
「丁寧やねん」
おじさん
「めんどくさい」
愛ちゃん
「……」
小さく笑う。
愛ちゃん
「変な人やな」




