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夢で出会ったモブ令嬢を王太子は絶対に手放さない  作者:


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12/20

また来た。どうしてここが分かるの

 昼休み。


 私は講義棟の裏を避け、今日は中庭の奥、小さな温室裏の通路へと足を運んでいた。


 ここはあまり通る生徒もおらず、背の高い植栽に囲まれて視界も悪い。人目を避けるにはちょうどいい場所だ。


 昨日の出来事を思い返すたび、胃のあたりがそわそわする。


 あれは……偶然じゃない。


 レオナルト殿下の言葉。まなざし。あの微笑み。


 そして最後の「また来るよ」という、あの一言。


 夢でも見ていたのかと、何度も自分に問いかけたけれど、あの視線の熱だけは忘れられなかった。


 だから、同じ場所にはもう行かない。


 静かに暮らすには、注目を集めることは絶対に避けなければならない。


 ……今日こそ、ひとりで食べてみせる。


 そう心に決めて、私はパンの包みを膝に乗せた。


 甘く煮詰めた果実を挟んだそれは、今日の密かな楽しみ。ひと口かじると、やわらかな甘みが口いっぱいに広がった。


 ……ふふ。これで、勝ったも同然。


 勝負相手が誰なのかは、少し考えないことにして。


 誰にも見つからずにこの時間を終えること。それが、私の静かな勝利条件だ。


 だったのに。


「……やっぱり、今日はこっちだったか」


 あまりにも自然に響いた声に、私は反射的に身を固くした。


「っ……殿下……」


 昨日と同じ。いや、それ以上に静かに、私の隣にレオナルト殿下が現れていた。


 どうして、ここに……?


 講義棟の裏を避けたのに。人が来ない場所を選んだのに。


 それなのに、なぜ……なぜ、あなただけが……!


「驚かせたなら、すまない。でも、また君に会える気がしていた」


 そう穏やかに微笑んで、彼は少し距離を保ちながら腰を下ろした。


 まるで私がこの場所を選ぶことを、最初から知っていたかのように。


 ……まさか、昨日の言葉は……脅しじゃなくて予告だった?


「今日は、少し甘い香りがするね。……果実パン、かな?」


「…………」


 言葉が、出ない。


 なぜ知ってるの?  どうして、そこまで……


「……セレナ。君がどこにいても、俺は必ず見つけるよ」


 やさしく告げられたその言葉は、まるで誓いのようで。


 私は思わず、胸元のリボンをぎゅっと握りしめた。


 ……この人は、私の何を知っているの?


 私がどれだけ静かに生きようとしているか。  どれだけ気配を殺し、誰にも気づかれないようにしているか。


 それを、すべて、壊そうとしている。


 なのに、その眼差しにあるのは、悪意でも好奇心でもなく。


 ただひたすらに、慈しみの色だった。


 ……どうして。どうして、そんな目をするの?


 私は、あなたに何もしていないのに。


 ……おかしい。これは絶対に、おかしい


 でも、その異常が、私の心に波紋を広げていく。


 まるで、彼はずっと前から、私のすべてを知っていたように。



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