第6話 世界会議
翌日 未明。
世界緊急合同会議。
各国代表はそれぞれの拠点から接続され、
巨大なモニター越しに同じ映像を見ていた。
議長国・日輪代表が、短く告げる。
「次の議題に入る」
画面に映し出されたのは、
人の形を歪めた異形、
街を蹂躙する巨大な魔物たちだった。
「これより、これらの生命体を、
〝魔物〟と呼称する」
空調の低い音だけが、会議室に流れる。
「発言を許可する」
「本件は、単一国家では対処不可能だ」
「魔物の出現は同時多発。
発生源、因果関係、すべて不明」
画面が切り替わる。
SNSで流出した映像。
黒翼を背に、魔物を斬り伏せる男。
「この男が魔物を排除している様子が、
確認されている」
一拍置いて。
「黒竜だ」
星条連合代表が、指を組んだ。
「調査は必要だが、
黒竜と同一形状の竜翼を持つ男が、
その出現地点にいた」
「映像は、すでに世界中に拡散している」
会議室が、ざわめく。
極東連邦が続いた。
「現時点で、
男および竜による人類への被害はゼロ」
「それどころか、
魔物のみを選別して排除している」
「この行動は、明確に〝意図的〟だ」
龍華共和国代表が、静かに言った。
「だからこそ、危険だ」
視線が集まる。
「意思を持つ超戦力は、
同盟者にも、脅威にもなり得る」
「だが、我々は何も知らない、
判断材料すら……」
沈黙。
誰かが、ぽつりと呟いた。
「……接触は?」
日輪代表が、首を横に振る。
「試みる価値はある」
「だが、失敗すれば……」
「敵対行為と見做される可能性が高い」
星条連合代表が言葉を継ぐ。
「よって提案する」
「黒竜を、
〝暫定的中立存在〟として扱う」
「敵対行動が確認されるまで、
直接介入は行わない」
「同時に、
魔物対策は各国で独自に進める」
極東連邦代表が、静かに頷いた。
「観測と分析を優先」
「軍事行動は、
最終手段とする」
龍華共和国は、しばらく沈黙し。
「…受け入れよう」
決定。
人類は、
黒竜を〝敵でも味方でもない存在〟として、
世界に残すことを選んだ。
会議終了。
回線が一つ、また一つと切断されていく。
最後に残った日輪代表が、
小さく息を吐いた。
「…龍華のために……」
誰にも聞かれないよう、唇だけが動いた。
浮遊城内部
白い天井。
柔らかな光。
ユウは、
ゆっくりと目を開けた。
「……ここ……」
ベッドの感触。
体は、重い。
だが……。
生きている。
記憶が、少しずつ戻る。
ユウは天井に拳を向け呟いた。
「俺、やれたんだよな……」
ユウは、天井を見つめたまま、
小さく息を吐いた。
「…これから俺達どうなるんだろ……」
世界は、すでに動き出している。
そして…。
この男が目覚めたことで、
次の歯車が、確実に回り始めた。




