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第2話 壊れた日常


駅前(ナツ視点)




……ゴゴゴゴゴ


地鳴りが響き渡る。


次の瞬間、

足元のアスファルトが波打ち、

信号機が大きく傾く。


人々の悲鳴が、一拍遅れて街を満たした。


「きゃあぁぁぁ!!」

「逃げろぉ!!」


立っていられない。


ゴゴゴゴゴ……


「……お、収まった?」


誰かがそう言った瞬間だった。


「い、痛ぇ……っ!」


少し離れた場所で、

スーツの男が膝をついていた。


「おい、大丈夫か?」


周囲の人間が、男に駆け寄る。


……その時。


「……ぐ、ぁぇ……?」


男の異変に、周りの空気が凍る。


「え……?」


男が自分の手を見ると…。


ミチ……ミチミチ……


嫌な音を立てながら、

皮膚の下で何かが蠢いている。


「……?!」


男の背中が、不自然に盛り上がる。


ブチッ、ブチブチィ


スーツが裂け、

黒く濡れた外殻のようなものが露出した。


「う、嘘だろ……」


「な、なんだよこれ!?」


誰かが叫んだ。


だが、変化は止まらない。


バキバキバキッ!!


骨が折れ、組み替わる音。

腕が異様に伸び、肘が逆方向に曲がる。


「た、助け……」


男が、こちらに手を伸ばす。


……だが。


その手は、

もはや人間の形をしていなかった。


ギチギチ……グチャ……


首がねじれ、

顔面が割れ、

中から……複眼が覗いた。


「ギィィ……」


アリのような〝それ〟は、

奇声を出し周囲を見回す。


……そして。


グチャッ……


一番近くにいた女性を、

何の躊躇もなく押し潰した。


「きゃ……」


悲鳴は、途中で潰された。


血や骨、

人だったものが飛び散る。


「……ひ、ひぃ……」


足が、動かない。


誰かが叫ぶ。


「に、逃げろ!!」

「人が……人が化け物に……!!」


だが、〝それ〟はもう走り出していた。


ズシン…ズシン……


重たい足音。

人を見ているはずなのに、

ただ〝餌〟を探しているように見えた。


俺の喉から、声が漏れる。


「……もう…ダメだ……」


そう思った、その刹那。


ズバッ!!


視界を横切った、黒い閃光。


次の瞬間、

魔物の胴体が、真っ二つに裂けていた。


ジュゥゥゥ……


切断面から、黒い炎が噴き上がる。

燃えているのに、

その炎は蒼黒く、冷たく見えた。


「……え?」


空を見上げる。


そこにいたのは…、

俺の親友だった。


背中から、黒い翼を広げた親友。


スゥゥゥ…


ゆっくりと地面に降り立ち、

燃え尽きる魔物を一瞥すると、俺を見た。


「よかった……、怪我はないみたいだな」


俺のことを心配してくれてるのに……、

言葉が……出ない……。


ユウは周囲を見渡し、苦い顔をした。


「……ちっ、まだいるな」


ドォン!!


別方向で、爆音。


ガラガラガラガラ…


建物の中から、別の個体が姿を現す。


「おい!、お前ら逃げろ!!」


誰かが叫んだ。


でも、ユウは動じない。


ボォォォ……


黒い炎が、ユウの刀に灯る。


「時間がねぇんだ、…死ね……」


シュン


ユウの姿が消えた。


体を持っていかれそうな衝撃波。

化け物の首が宙を舞い、

遅れて胴体が崩れ落ちる。


「…すげぇ……」


気づけば、

ユウはもうそこに立っていた。


返り血ひとつ浴びないまま戻ってきて、

俺の腕を掴んだ。


「行くぞ」


「え?」


「あいつらも助けに行く」


俺は担ぎ上げられた。


「ま、待てって!」


「悪い、時間がないんだ…」


ユウは空を見上げた。


「ちゃんと掴まっとけよ」


次の瞬間、

背中の翼が大きく広がる。


バサァァッ!!


「おい!、ちょっ、ま……」


バッ!!


地面が、一気に遠ざかる。


「うわぁぁぁ!?」


俺は無理やりユウに担ぎ上げられ、

空へ連れ去られた。


下では崩れた街、

逃げ惑う人々、

そして、いまだ暴れる化け物たち。


「…ユウ!!、あいつらも助けに行くのか?」


「あぁ…、お前らだけは絶対にオレが……」


迷いがなかった……。


その言葉の重みを感じ、

俺は何も言えなくなった……。


「あと五人……」


ユウが呟く。


ゴォォォォ……


風を切る音だけが、耳を打つ。


こうして俺は、

その日……。


〝化け物みたいに強い親友〟に、

無理やり連れ去られた。

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