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初デートを題材にした掌編1
「行ってきます!」
2月の第1土曜日、私は予定よりも早く家を後にした。
晩冬のヒヤッとした肌寒い空気が頬を打つ。
それでも体は羽の様に軽い。
今日は念願の、彼との初デートなのだ。
道路沿いの並木道。街路樹は葉も付けず淋しげだが、私の心はすっかり春模様。
毎日の様に歩いている通学路も、今日はどこか違って見える。
私はルンルン気分で学校を横切った。
花に誘われるミツバチのように、軽快な足取りで駅前広場へ向かう。
道中、何度も彼の笑顔が脳裏に蘇る。
早く会いたい。
顔のニヤつきを押さえ込もうとしているうちに、駅前広場の梅の木が見えてきた。
そこで私は、はっとして足を止めた。
薄紅色の蕾をたくさんつけた梅の木。
その元には、すでに彼の姿があったのだ。
白い息を吐き、両手を温めている。
私は急に恥ずかしくなり、物陰に隠れてしまった。
まさか彼がもう待ち合わせ場所にいるなんて。
興奮と戸惑いが、カッと顔を熱くさせる。
私は慌ててスマホを取り出した。
スマホの画面を鏡にして、身だしなみをチェックすると、せっかくカールさせた前髪が、無惨にも汗で額にくっついていた。
慌てて乱れた前髪に櫛を通して、いちごフレーバーのリップを引き直す。
そして勇気をだして、何気なく彼に近づき、いつもみたいに声を掛けた。
「おはよう、早いね。もしかして待ってたの?」
「待ってねーよ」
子供の様な無邪気な笑顔。
いつもの学生服とは違う、男の子の服。
「ほら、行くぞ」
「あ、うん!」
私の手を引く、骨張った手。
とっても冷たく、とっても温かい手。
「うふふっうふふふふ」
「なに笑ってんだよ」
「なんでもない〜」
彼の手を両手で包み込む。
私は、彼が大好きだ。




