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2.人事は妻のお仕事ですもの

旦那様の選択を受け入れ、私は初夜を迎えることなくリライアス家で生活しております。

気遣うように見つめる侍女とメイドの顔はよく覚えておきましょう。


さて、初日に専属侍女と紹介されたミナは嘲る顔を隠しもせずにどんどんおざなりな対応になってきました。

実家から連れて来た3人の侍女には暫く手出しをしないようよく言い含めておきます。

先日は遂に「お飾りのくせに一々呼びつけないでくれますか」と言われてしまいました。

そろそろ3人の我慢も限界のようですので、執事のダニエルとミナを呼び出しました。


「お呼びでしょうか、奥様」


ダニエルが礼をして私に声をかける。ミナは頭を下げているけれどダニエルの後ろで仏頂面をしていますね。

今ダニエルが振り返ったらどうするのかしら、と思ったけれど、それは今度にしておきましょう。

ああでも、今度はあるのかしら。


「ねえダニエル。今のお屋敷の人事権は誰にあるか知っていて?」


至極当然の質問でもダニエルの表情は変わりません。

ミナは私を馬鹿にするように視線を横にそらしています。


「勿論でございます。先日、旦那様より全ての人事権は奥様に、と申し使っております」


深く頭を下げるダニエルを、ミナは驚愕の表情で見詰めています。


「何故…」


「あら?おかしなことを言うのね。私は旦那様の妻ですもの。

女主人としてお屋敷の管理をする義務があるわ」


「左様でございます。何かあればお申し付けください、奥様」


「ありがとう、ダニエル。では早速だけど、ミナは解雇してちょうだい。

紹介状は書いてあげるわ。今まで私の専属としてしていた仕事内容を余すことなくね。

それでも雇ってくれる家があればいいのだけれど、頑張ってちょうだいね」


息が上手くできていないのか、真っ青な顔でミナの喉奥から不自然な音がしています。

大丈夫かしら?


「ああ、そうなると治療院もすぐ出ないといけないのかしら?」


それは可哀想だわ、と3人の侍女を見れば、一番年上のアイビーが答えてくれます。


「いいえ奥様。伯爵家は1年分の入院費を年始に払い込むようですので、すぐに出ることはないでしょう。

残り3か月の間に、ミナが次の仕事を決めて毎月の入院費を支払えば継続して入院は可能です」


「あらそうなの、安心したわ。そういうことだから、そうね、荷物を纏めて出ていくまでに3日あげるわ。

3日後に今日までのお給金を受け取って部屋を引き払ってちょうだいね?」


早いぶんには明日でも構わなくてよ、と笑いかければミナは激しく震え始めてしまったわ。


「そんな…!治療院は私のお給料だけじゃ…とても…。

弟、たった1人の弟なんです!治療院に入って、やっと回復の兆しが見えてきたんです…!」


あらあら、実は弟思いのお姉さんだったのね。

先にダニエルに聞いていたけど、ご両親を亡くして身内は弟さんだけなのですって。

ご両親もリライアス家で長く働いていたようで、旦那様とは幼馴染のような間柄だったみたい。

旦那様はそれなりにミナと交流はあったようだけれど、主人の立場を誤ることはなかったと聞いています。

大方幼馴染とのロマンスを夢見てしまっただけなのでしょう。


言葉ではっきり言わなかった旦那様の見通しが甘かったようですわね。

愛人の座でも狙っていたのかしら?

でも弁えていない愛人は認めませんわ。


お願いします、と繰り返すミナに問いかけます。


「あらそうなの?それで、それが私に何の関係があるのかしら?」


絶句しているミナを見詰め、ダニエルに今までのミアの仕事ぶりを報告し、改めて質問をしました。


「それで、もう一度聞くわね。

私がお飾りなのが職務を放棄する理由になるのかしら?」


ミナの目からは涙が溢れだしていました。

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