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【第70話:健やかな心が 後編】

 ユアが惑っているところにダウスレムの声が飛ぶ。

「迷いを消してやろう」

そういった両目には赤い光、最初から向けられていた右手に禍々しい紫の光が集まっていく。

ダウスレムの声に振り返ったユアがその瞳の中に決意を見る。

反射的にユアはダウスレムを止めるため、身体強化とペルクールの光を持って切りかかる。

紫の魔法が放たれる前に、ユアのふる切っ先がわずかに届きそうだ。

ーーーその瞬間時が止まる


 ユアは光の中にいた。

まるで時間も止まっているように、ユアの剣先とダウスレムが重なる寸前で止まっている。

体は動かないが視線と心は動いていた。

ダウスレムの前にユアの剣を遮るようにラウマ様がいた。

『ユアよ剣を収めてください、その力を抑えるのです』

金色のゆるいウエーブを持った長い髪がゆらゆらと揺れている。

ラウマ様は動けるんだな?とぼんやり考えるユアであった。

その顔は正に神像と同じ、初めて森の泉で見つけたラウマ様だった。

『その力はあまりに激しく強い滅びの力、何物も阻むことが叶わない光です』

眉をさげ悲しそうなラウマ様が告げる。

『あの者に罪があるとしても、滅ぼしてはいけません。その光は輪廻の輪すら断ち切ります』

じっと見つめ合う二人。

にっこり笑うユアが答える。

「よかった、ラウマ様いなくなっちゃったのかと心配してました」


ーーーああ、いつもこうしてわたくしの想像を超える答えを出す。

なんて不思議な人間だろうとラウマは思っていた。

「力を返さなくてごめんなさい、どうしても痛いのをアミュアに分けたくなかったの」

静かに微笑むラウマ。

『あの分体はわたくしの望みが形をとったものです』

ラウマが説明を始める。

『あの森であなたに出会ったわたくしは、かつて受けた痛みで分かたれた分体であったのです』

あの二人の奇跡の前、分体を通して見たユアにとても深い興味と親愛を感じたこと。

自分もそのような人として存在してみたいと望んだこと。

記憶を失い力だけになりここに戻される寸前に強くユアとともに居たいと願ったこと。

そうして本来は戻った力でアミュアと呼ばれる分体をもどす予定だったこと。

このままアミュアが失われてもラウマに戻るだけだで無くならないと言うこと。

この場所に長くアミュアがとどまれば、いずれラウマに戻ってしまうこと。

そういった今の状態を詳しく説明してくれたのだった。

『どうかあの者もゆるしてあげてほしい、あの者もまたわたしの同胞なのです』

ぽかんとするユアが答える。

「アミュアはラウマさまの子供だったの?」

ん、なんでそうなる?とラウマが思っているうちに、ユアは結論付けてしまう。

「だってラウマさまの想いと希望から産まれた宝物でしょ?アミュアは」

クスクスとユアが笑う。

「あたしと一緒だね、あたしもおかあさんとおとうさんの願いと希望で産まれた宝物だって言われたよ」

うんうんと勝手に納得してしまうユア。

そしてラウマでさえ、そうかも?と思える説得力があった。

じっとラウマを見るユア。

「だからアミュアは変えてほしくない」

透明な願いのこもった眼だった。

 このままペルクールの雷が振り下ろされれば、この空間そのものにダメージがある。

それは空間のほとんどを占めているラウマにとっても深刻なダメージとなるのだ。

なんとかそれをやめてほしいラウマであったが、なんだか全てユアに任せようと思ったのだった。

『わかりました、ユアの決めたようにするとよいでしょう』

最後ににこっと、とても魅力的な笑顔を残しラウマは去ったのだった。


ーーーそして時が動き出す。

ユアの振り下ろした切っ先がダウスレムにふれた瞬間すべてを眩ますほどの光が溢れる。

薄れゆく光の中ユアにははっきりと聞こえたのだ。

ダウスレムの声が。

「ありがとう…」

そうしてユアの意識もここで途切れたのだった。



 

そうして次に目覚めたユアは、なんだか柔らかくていい匂いのする所に寝ていたのだった。

「あれ?アミュア?」

開いた瞳に映ったのはひまわりのTシャツ。

その上には見慣れたアミュアの顔があった。

すみれいろの綺麗な瞳に、つややかな長い銀髪。

いつもより柔らかい笑みが見えて、ユアはとてもうれしくなった。

「よかった、アミュアがちゃんといる」

少しだけ動こうとするとふにゅっと柔らかく頭の下で形を変える。

(膝枕されてるから、これはアミュアのふともも?アミュアってこんな柔らかかったっけか?)

くんくんと匂いを嗅いでみれば、間違いなくアミュアの匂いだ。

「あんまりむにむに動かないでユア、くすぐったいです」

はっと起き上がるユア。

「ええええ!!」

指さす先には確かにアミュアがいる。

ただしとても成長している。

声がいつもよりわずかに低いのが気になって起き上がってみれば、そこには成長したらこうなるだろう、というアミュアがいた。

「ひまわりのゆがみで気づくべきだった…」

そう、見上げたアミュアの顔の前に持ち上げられたひまわりがあったのだ。




 不思議なことに、今いるここはルメリナからほど近いラウマの祠。

かつて始まりのときにアミュアに名付けた場所であった。

その後ひまわりだけでは隠し切れなくなったアミュアの体を隠すため、ユアが鎧下にしていたオレンジ色のTシャツも提供した。

 ちょっとだけ加工して安全ピンでとめると、見事にくびれが落ちるのを止めた。

「前のストンとしたアミュアなら落ちてるねこれ」

ユアは革鎧だけになったのでお腹とか色々出ているが、二人共法的には通りそうな格好になった。

「ひどいこと言わないで、前だってくびれてました」

「いやくびれは全くなかったよ」

食い気味に否定するユア。

ぷくっとなるのアミュア。

見つめ合うと、ぷっとふきだして笑いが溢れるのであった。


ちちちちと小鳥が飛んでいく。

正午くらいなのか真上に来ている太陽がサンサンと光を落としていた。

二人の笑いに誘われたかのように。


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