【第56話:目覚めない妖精と咲けないひまわり】
盗賊たちは街道横のちょっとした広場に埋葬した。
アミュアが心配でカーニャに見ていてもらったため、ユア一人で弔った。
広場のスペース的に別々に穴を掘れなかったので、まとめて埋めた。
最後に彼らの武器を刺し墓標とした。
手を合わせるユアはシルフェリアで習った葬送の祈りをささげる。
(偉大なる戦士?よ、いくさばゆえ正しく弔えないことを許したまへ安らかに眠れ。)
ちょっとだけ死者に対する敬意が足りなかったのは、仕方なかったかもしれない。
次に襲い掛かってきたのは影どころか、肉も纏っていない敵だった。
「カーニャ魔法でぱぱっとならないの!」
言いながら2体のスケルトンを相手取り、一歩も引かないユア。
乱戦になったので、短剣に切り替えている。
クレイモアは背に戻した。
「そんな便利じゃない魔法は!それにわたし範囲の光魔法ないのよ!」
言い返すカーニャもエストックを振り回し、なんとか馬車を守っている。
見えるだけで6体のスケルトンが襲ってきている。
ユアはペルクールの力も使っているのだが、スケルトンは武器と盾を装備した戦士タイプだった。
鎧こそ部分鎧だが、全般に強度はあり戦闘不能にするのが難しい。
馬車の周りを移動しながらちょいちょいヘイト稼ぎに他にも手を出すのだが、上手くいかない。
最初に狙ってきた半分は馬車に目もくれず、残り半分は馬車から離れない。
こういった敵の意識の向きに敏感なユアは気付きだしていた。
このスケルトンはいままでの敵と違うと。
それでも技量でもう半分以上戦闘不能にはしていた。
ユアの短剣が小さく弧を描き、足を裁ち腕を飛ばし、少しづつ数を減らしていった。
盗賊ゾンビの襲撃から時を置かずスケルトンの集団に襲われた二人は、目を覚まさないアミュアの事も心配なので、一旦町まで戻ることとした。
カーニャが運転しながら照明の魔法を操り、夜間であるにもかかわらずそうとうの速度だ。
その揺れる馬車の天井には後方と左右を警戒するユアが乗っていた。
「このまま進むけどユア大丈夫?!」
走行音と風が邪魔になるので、叫ばないと会話できない。
カーニャは首だけ後ろに向け叫んだ。
ユアは暗闇の中に居るので、表情までわからないが答える声にはまだ余裕がある。
「平気!追っ手もないみたいだし少し速度おとしてもいいかも?!」
ユアの提案を受け、少し減速するカーニャ。
すっかり夜になり今夜は月も無かった。
まもなくルメリナに向かう街道と言うところで、やっと馬車を停めた。
「少し外見てて」
短く告げ馬車に入るユア。
万一の襲撃も意識しドアは開けたままだ。
カーニャも一旦運転席から降りて軽く伸びをした。
(アミュアちゃん大丈夫かな?)
カーニャもアミュアが心配だったが、ユアのことも心配なので任せて周囲警戒するのだった。
(たおれたアミュアちゃんを見たユアの表情)
思い出したのか、ぶるっと身震いしたカーニャ。
(シルフェリアでみた時の迫力があったな。ちょっと怖かった)
馬車にちらと目を送りおもったカーニャだった。
一方馬車の中でも沈黙が支配していた。
アミュアを毛布でぐるぐる巻きにして、座席と荷物のあいだにはめていた。
転がってけがをしないようにとの配慮なのだが、少しユーモラスではあった。
そんな中アミュアの足元に膝を抱えて座るユア。
顔色は悪く少し震えているようだ。
(アミュア…ごめんね嫌だったね、辛かったね…あたしがもっとしっかりしてたらな)
どうしても自分を責めたくなるユアであった。
(あたしがもっと強くならなきゃ)
きゅっと握った拳は、決意のためか怒りのためか。
アミュアは寝息さえ聞こえず、怖くなったユアはちょこっと出ている顔に近付く。
自分の髪がアミュアに当たるころ、やっとかすかな寝息を感じほっとするユアであった。
ふわっと感じたアミュアの甘い匂いが、余計にユアの胸を締め付けるのであった。
その後、東側の空が明るくなるまで馬車をゆっくり進め、遂に町まで戻ったユア達はそのまま馬車で病院をめざした。
この町には小さいながらも病室まである病院があった。
総合医院だったし、医師も一人という規模だが、地域を支える重要な施設だ。
受付をすませ、緊急と言うことで病室に直接運ばれるアミュア。
あれ以来全く目を覚まさない。
時を追うごとに二人の心配は大きくなっていった。
一通りの診断が終わり、一旦病室をでた医師と二人は診察室で話をしいていた。
「そう、大変でしたね。ハンターの仕事は過酷とはいえお辛い事だ」
カーニャの説明を聞き終わり、口を切ったのは二人より少し年上の青年で、眼鏡をした医師だ。
「もう長い事3人で戦ってきたのですが、対人戦であの子が相手を殺したのは初めての事でしたの」
それを聞いて表情が沈む医師。
「そうでしたか…今は経過を見ないとわかりませんが、意識が戻ったら少しゆっくりさせてあげてください」
そう締めくくる医師に軽く頭を下げる二人が退室する。
病室に向かいながらさらに顔色の悪いユアをいたわるカーニャ。
「ほら、顔上げてユア、今はあなたも疲れているはず。私がアミュアちゃん見てるからホテルに戻ってシャワーでも浴びて来て。寝れるなら少し寝てきてもいいのよ」
カーニャに肩を抱かれ顔を上げるユア。
「うん…宿も取り直さなくちゃだもんね。行ってくる、アミュアをお願いね」
思いがけず弱弱しい声と手の中の薄い肩に、カーニャはユアが自分より年下だったと思い出した。
最後にキュっと抱きしめて笑顔で言うカーニャ。
「きっと大丈夫、アミュアちゃんも疲れてたんだよきっと。寝て起きたら元気になるわよ」
そう言ってユアを送り出し、アミュアの病室に戻るのだった。
そうして長い長い一日が終わり、二人は疲れ果てたまま翌日を迎えたのだった。
カーニャの内心とは裏腹に、美麗な朝焼けが広がって行くのだった。




