【閑話:さみしい夜には】
すやすやむにゃむにゃと、健やかに眠り続けるコンビの相方を見て。
なんだか呑気なのか、信頼されているのか判らず不思議に思うアミュアであった。
とてもとても長い旅を続けてきたと感じるアミュアには、ユアはとても新鮮な環境の一つだ。
(とても興味深い)
と師匠なら言うのかな?ふとそう思いにこっと笑みを漏らす。
(今日の移動中戦闘があったけど、魔法が上手く使えなかった)
ぱちぱちと未だ元気に燃えている焚火は、なんだかユアの元気でももらったかのようだ。
(師匠と一緒の世界では簡単に使えたのに。異世界だったから?こちらは魔力が足りない気がする。)
でもこちらでは相方がいるから、戦力的にはむしろ楽だな、とユアを見るアミュア。
くるくると変わる表情、思いがけず優しい言葉。
大きな眼に、たくさんの感情。
柔らかそうな、お日様のような髪。
(きっとわたしがもっていない沢山のものを持っている)
だから気になる、目がはなせない。
「あむにゅあ」
変な声を出し、少し野営用マントがずれて腕が延ばされてくる。
寝相はあまりよくないのかな?
そんな事を思いつつ、そっとマントを戻してあげるアミュア。
(不思議な経験をしてきたのに、なんだか夢のようだ)
腰に差した銀ロッドに手を添えしんみり思う。
つい半日前に師匠を看取ってきたのに。
「こんなときは涙をながすものでしょうか」
つい声に出してしまい、慌ててユアを見る。
相変わらずむにゃむにゃしているが、ユアは起きたりはしなかったようだ。
(もうししょうは答えてくれない)
胸の奥がキュっとなり少し辛かったが、やはり涙は流れてこなかった。
静かに耳をすまし、命の音たちを聞き取ろうとするアミュア。
頭上には星もなく、風も方位を教えてはくれない。
そんな心細い夜に、すぐそばの相方がとても頼もしく感じるのであった。
今はまだ、それだけであった。
ちょっと短いのですが、直前の38話がながかったのでいいかな思いました。
説明すると負けな気もしますが、私の表現力ではわかりづらいでしょうから、書いちゃいます。アミュアの転移は第一章閑話の直後と第1話の間。閑話のシーンは第1話と第2話の間の夜です。(お気づきの人もいるでしょうけど)
ここまでお読みいただきありがとうございました。第4章完結です。
次回から第5章で現在に戻る流れです。引き続きよろしくお願いします!




