【第一話:でこぼこコンビ誕生】
仁王立ち。
すこし上向いた顔で見下ろすユア。得意げな顔。明るい茶髪、肩までのショートカット。
「身長的にもあたしがおねーさん。はいこれ決定!」
一方、見上げるその子、幼さの残る柔らかそうな頬の少女。背中まで流れるストレート銀髪ロング。
すん、とした無表情のアミュア。
「せいしん年齢的にわたしのほうが、”おねーさん”ですが?」
「ぐふっクール幼女破壊力たけえ…だがまけぬ。あたしの胸のあたりまでしかないじゃん、そりゃ妹でしょ!」
ユアはおおげさにうずくまって見せる。
今度は見下ろすアミュア、相変わらず表情は変わらない。
「しんちょーは成長のしひょーとしては不確かです、だいたい、実年齢とそぐわないのは…お互いさまでは?」
泉の祠を後にした二人は、やわらかな緑のトンネルを抜けていく。
「さあ、街まではまだまだあるよ。足元には気をつけてね」
ユアは少し前を歩きながら振り返る。アミュアはその後ろをぴたりとついてくる。
足元の根っこに気づかず、アミュアの身体がふらりと前へ傾いた。
「わっ──」
とっさに伸びたユアの手が、アミュアの手首をつかんでいた。
ユアの手。
思ったよりひんやりとして、けれどしっかりと力強い。
「……ありがとうございます」
「うん。今さらだけどアミュって、けっこう軽いんだね!」
「当たり前です。ユアさんが重いだけです」
「それ容赦なくないぃ!?」
けれど手はしばらく、つながれたままだった。
ーーー
「それでね、昔ここを買い出しに行くのに通ったんだけど。なんだかなつかしいなって」
「買い出しは、たくさんのかいものですか?」
「そうそう、村のみんなにたのまれたお使いみたいな感じだね!」
ユアの答えを聞き、ブツブツと口の中で唱えているアミュア。
「かいもの、かいだし、かいですと?」
謎の三段活用か呪文のような呟き。
しばらく歩き続けて
ふとアミュアが尋ねる。
「ユアさん、この道…どこにつくんですか?」
「ユアでいい!あたしもアミュって呼ぶ」
「いえアミュアです」
かなり食い気味にアミュアが割り込む。
「あふぅ…」
高速切り替えしでユアは心のダメージ。
「コホン。森の小道。泉から街につづく道だよ。昔からある道で、けっこう道がでこぼこしてるけど」
「でこぼこ……」
アミュアは不思議そうに道の石を指さした。
「うん、だから私たち“でこぼこコンビ”ってわけ!」
ユアはお日様のように、にっこり笑いながらそう言った。
「……ふふっ、名前だけはセンスあるねユア」
アミュアもわずかに口元を緩める。ちょっとだけほほに色を指すのは、ユアの笑顔が思いがけず魅力的にみえたからだ。
小鳥のさえずりと、葉のざわめきが耳に心地よい。
二人の影が伸びて、小道にぽつりぽつりと光がこぼれていく。
けれど、街へ向かうその道は、まだまだ長い。