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【第十話:3人旅のはじまり】

 午後に入り雨になったルメリナの街。

翌日には元気に戻ったユアと、今日は遠征用買い出しに来ているアミュアだった。

水色の傘とオレンジの傘が並ぶ。、暖色と寒色の対比が美しい配色であった。

「ユア、保存食ありました。どれくらい買いますか?」

 すっかり元気をとりもどしたユアが、ニコニコ答える。

「そうだね~往復で5泊、余裕を見て6泊分かな。あまいのがいいな~」

「ぜいたくはダメですよ」

 カラフルで美味しそうな保存食を持つユアの横で、茶色一色の見るからに淡泊そうな物をもつアミュア。

「じゃあせめて半分、いや3分の1でもー。いいでしょ?アミュアの好きなベリーのもあるよ!」

「むぐぐ、ダメです!今回はがまんです。おじさんこれを6泊2人分ありますか?」

 にこにこ二人のやり取りを見ていた商人が品出ししながら答える。

「ここにあるものは、倉庫にもまだまだあるから遠慮なく注文してください」

 商人のセリフに少し明るい表情になるユアだったが、アミュアは無常に一番安いものを選び取って買いもの籠に詰めていく。

 この世界の魔法化学は進歩目覚ましく、一食あたりの容量は拳におさまるほど小さい。

使用するときは湯に戻すだけである。そのまま食べても栄養的にはたりるのだ。

普通は野草や、肉など出先で採れるものを足しシチューなどにする。

 手伝いながらも、目はカラフルな保存食にくぎ付けなユアであった。


買い物ついでに武器防具店や洋服屋などひやかし、宿に向かう二人。

しとしとやさしい雨が街路を濡らしていた。

歩きながらユアが口を開く。

いつもの調子ではない。

「昨日はごめんねアミュア。なにも説明できなくって」

少しだけ眉をさげるユアを見て、アミュアも声のトーンが落ちる。

「気にしないで。ユアが話したくなったら話してほしい」

いつも以上に大人びたアミュアに、ちょっと頼もしく感じたユアだった。

「…ありがと。まだちょっとあたしの中でもぐちゃぐちゃしてて。今は元気だからね!」

最後はいつもの調子でにっこり笑うユアだった。

「わかりました、そろそろ帰りましょう」

ちょっと荷物を持ち直しながら、傘で顔を隠すアミュア。

(やっぱり無理している)

吊り上がる眉をユアに見せたくなかったのだ。




『gurururuuuu・・・』

低くうなる鹿のようなものがいる。

その体長は馬よりもはるかに大きく、その角は高らかにカーブを描き、地に影を落としている。

赤い目をした鹿型の魔物だ。

シュピン!ドッ!

 金色に輝く、カーニャのレイピアが走る。

素人には動いた瞬間が見えないほどのけり足。

魔物も見失ったのか、その胴に穴が開いてから気づいた。

悲鳴さえ上げさせない。ズズンと重たげな音をたてて鹿が横倒しになる。

 そもそもレイピアは対人戦を想定した武器だ。

これがカーニャの金色の魔力を帯びた突きになると、大型獣の突進ほどの威力になるようだ。

魔物の厚い毛皮を抜き、頭が入りそうなほどの穴が開く。


「いかがかしら!おおっぉーっほっほ!」

 高らかに勝利を告げる笑い声。

真紅のカーニャとは名前だけではないようだ。

「すごいです」パチパチ

「すごい!すごい!ちゃんと強かったんだねカーニャ」パチパチ

二人も驚きながら拍手している。

「ちゃんととはなによ!ちゃんととは!わ・た・く・しはAランクでしてよ!」

納刀して腰に手を当てたカーニャが声を荒らげる。

 調査依頼で移動中現れた鹿型の魔物を、「ちょっと見ていなさい!」と自分だけ先行し仕留めたカーニャであった。

一応、武装して付いてきたユアとアミュアに出番は回らなかった。



「やっと森まできました」

ふぅふぅと息を乱しながら丘に登ったアミュアが言う。

小高い丘を越えると、もう手が届きそうなところから黒々と森が深かった。

細いながらもしっかりと道はあるが、森の手前までが今の文明の版図だ。

森に入れば道はあるが、気は抜けないだろう。

日もだいぶ傾いてきている。

「今夜はここでキャンプね。あなたたちはキャンプ持ってるみたいね」

ユアの背負った荷物にキャンプらしきものを見つけ、カーニャが言う。

「二人で半分こだけどね~結構高いからキャンプ道具って」

「そ…そう?私のは魔力圧縮型だから、大きいわよ?3人くらいなら入れますわよ?」

ちょっとモジモジ話すカーニャに気付かず、準備を始める二人だった。

(べ…別に寂しくなんてありませんわ!)

自分もキャンプの準備をしながら心でツンするカーニャであった。


言った通りカーニャのキャンプは大型であった。

高さはさほどでもないが、奥行きがあり確かに3人でも寝れそうではあった。

ユア達のは一人用なのだが、二人とも小柄なので何とか寝れそうである。

これもカーニャ供出の魔法化学式コンロに鍋がかかり、くつくつとシチューが煮えている。

「驚いたわ。あなた料理できるのね?」

手際よく準備するユアを見て、カーニャは少し意外そうな顔をする。

「コンロとお鍋借りたからね、調理は任せて。さっきの鹿もいい肉だしたしね!」

「ユアはさばいばびりてぃ?が、あるのです」

なぜか自慢そうにカップを持ち、カーニャの隣に座るアミュアが言った。

「ユアがいると外泊がらくなのです」

「アミュアちゃんは手伝わないの?」

カーニャに尋ねられると少し悲しそうに答えた。

「勉強中です。わたしが手伝うと余計に大変だってユアが…」

「いいのいいの!あたしこうゆうの好きだし、田舎で何度も仕込まれてるから!」

ちょっとテンションの下がり気味なアミュアにフォローするユア。

「さあ!できたよー♪魔玄鹿のホワイトシチューでーっす!」



風も止み静かな丘の上、少し姦しく夜が深まっていった。

調査依頼1日目が終わった。

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カーニャさん、ツンデレ!?
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