勇者(仮)魔王幹部と戦う2
俺(主人公の村谷朝日)の刀とネズミ野郎(魔王の二十本指の一人コーラル)の爪がぶつかり、火花が散る。
「ハハッ、すごいね。その力、魔王幹部に匹敵すると言っても過言ではないよ。さすがだね」
「うっせえ!」
距離を取る。
コーラルの攻撃は、先ほど俺を吹き飛ばした「残像を伴う一撃」に酷似していた。だが、全身に雷を纏わせた今の俺なら、その動きを捉えることができる。
(奴は……火炎魔法をジェット噴射のように使って加速しているんだ)
コーラルの背中から激しい炎が吹き上がった。その瞬間、凄まじい推力によって、奴の体は音速に近いスピードで加速し、俺の周りを円を描くように三つの残像を作りながら走り出す!
シュオオオオッ!
コーラルが俺の周囲を高速で旋回し始めた。三つの残像が生まれたかと思いきや、同時に三方向から爪の攻撃が襲いかかる!
ガギン!キィン!
俺は刀を高速で振るい、三つの爪を弾き飛ばした。しかし、それを凌いだ瞬間、本命である四本目の爪が俺の腹部を正確に狙って突き出される。炎の推力が乗った、重い一撃だ。
「ッ!」
雷を上に飛ばし、真上に跳んで回避する。
「あっぶ……なっ!?」
だが、空中に逃げた俺の目の前に、コーラルが先回りしていた。
右足のかかとに炎を宿した、強烈な蹴りが放たれる。炎の推力による加速が乗った、必殺の一撃――。
腕をクロスしてガードしたが、衝撃を殺しきれず、凄まじい勢いで吹き飛ばされた。さらに、追撃の手は緩まない。再び目の前に現れた奴が、横から左足でのかかと落としを叩き込んでくる。これもまた、爆発的な推力を伴っていた。
「グハッ……!」
体に激痛が走り、俺はそのまま地面を転がるようにして吹き飛ばされた。
四つん這いになり、荒い息を吐く。
(どうする……? 最高速度を出せば勝てる。だが、あれは体力の消費が激しすぎる……)
襲いかかってくるコーラルを間一髪で避け、体勢を立て直す。
俺の最高速度はおそらく音速を超える。だがその反動は大きく、発動後は激しい疲労で一時的に動けなくなるリスクがある。
これは、俺だからこそ可能な技だ。「雷泳」は体に雷を纏い全能力を底上げする技だが、この技は違う。雷そのものを体に直接流し込み、雷速以上のスピードを強制的に生み出す。
常人が行えば制御に失敗して心臓が止まるだろうが、俺には「不老不死」と高い回復能力がある。どれほど負荷をかけようと、耐えきれるはずだ。修行の時も、問題はなかった。全身に雷を流すため、色んなとこが焼けるが、再生能力で焼けたとこを一瞬で治す。再生能力は体力を消費するし、雷を耐えなければいけないので、それでも体力を消費する。
「雷身一体!」
バリ、バリバリバリ!
体に雷を纏い、さらに内側へと流し込む。周囲の地面は漏れ出る雷と熱で地面は割れ、砂がガラス状に溶けていく。
コーラルが驚愕に目を見開いた。
一瞬で間合いを詰める。首を狙った一撃は、紙一重のところで反応され、致命傷には至らなかった。だが、刃は確実に奴の喉元を掠める。
「ぐっ……!」
鮮血が舞う。魔王幹部と言えど、首を裂かれればただでは済まないはずだ。
「ハハハ! すごいね! あと少しでやられるところだったよ」
次で決める。俺は奥の手を繰り出す準備をした。
本来の「六幡蜘輪斬」は、蜘蛛の脚のように六箇所を同時に斬る逃走不能の連撃だ。だが今の「雷身一体」状態なら、八本はいける。
「八幡蜘輪斬!」
逃げようとするコーラルの逃げ道を、八つの斬撃が完全に封鎖する。
連撃が終わり、少し距離を取り見ると、コーラルは全身から血を流し、力なく膝をついていた。
ゆっくりと歩み寄り、刀の先を突きつける。
「もう終わりにしよう」
「そう、だね……」
奴は弱り果てた様子で、それでも笑いながら答えた。
俺は刀を高く掲げた。上空に巨大な雷雲が渦巻き、コーラルの頭上に雷を落とす準備が整う。
俺も念の為雷が落ちて来ると同時にコーラルを真っ二つに切る。この場にピッタリな名前の技名「落雷」。この技は刀を上から振り下ろし対象を真っ二つに切る技。本来落雷と一緒に使う技ではないが、まぁいいだろう。これを本物の雷と同時に発動する。
刀を振り下ろす衝撃と、本物の落雷を同時に叩き込む必殺の一撃。
「落雷W!」
轟音と共に雷が落ち、俺の刀がコーラルの体を真っ二つに両断し、雷で体が焼ける。
コーラルの体は肩のあたりから崩れ始め、塵となって消えていく……。
勝利を確信した、その時。俺の足元に巨大な魔法陣が展開された。
「嘘だろ……!?」
魔法陣から放たれる不気味な光を浴び、息が出来なくなった。
(い、息がで、出来ねぇ!)
なんだこれは、油断した。
「くっそ……」
抗う術もなく、意識が遠のいていく。俺の意識は深い闇に沈んでいった。




