表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者(仮)の俺の話  作者: モヒチャン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/69

勇者(仮)の小遣い稼ぎ

ギルドの掲示板の前で、俺と栞は並んで依頼書を眺めていた。

「うーん……魔物討伐、盗賊退治、薬草採取……どれも重そうだな」

「もうちょっと軽いのないの? せっかく街が落ち着いたんだし」


俺がぼやくと、栞が掲示板の隅に貼られた一枚の紙を指差した。

「これとか。『町の外にある村で、畑を荒らす動物を退治してほしい』。……報酬は、まあ……安いけど」

「おっ、それだそれ。動物退治なら良さそうだな」

「小遣い稼ぎ程度で依頼受けよっか」


そんな軽口を交わしながら、俺たちはその依頼を受けることにした。


村に着くと、あたりはのどかな雰囲気だった。

畑の向こうで作業していた老夫婦が俺たちに気づき、手を止めて駆け寄ってくる。


「おお、冒険者さんかい。いやぁ助かるよ。最近、夜になると畑の作物が根こそぎやられちまってねぇ」

「動物って言ってましたけど、見たんですか? あと、目星とかあります?」

「いや、見たことはないんだ。けど……朝になると、地面が小さな足跡だらけで……あれはどうも、ネズミの足跡にしか見えないね」


俺たちは案内されて現場を見せてもらう。

確かに畑の端には大量の小さな足跡。そして、噛み千切られた作物。


「ネズミ……ちょっと量多くない?」

栞がしゃがみ込み、土をすくって観察する。

「ネズミにしては群れすぎよね。普通こんなに大量発生しないわ」

「でも、実際いるんだし……」

「まあ、そうね」


日が沈み、夜の結界が村を包む。畑の周りにはたいまつが並べられ、ゆらゆらと炎が揺れていた。

俺と栞、正晴、ののかちゃん、そしてののかちゃんの弟・あきとの五人は、畑の端に身を潜めていた。


「……静かだな〜」

「もう帰って寝てるとか?」

「ネズミが寝るかよ」

「ほんとに来るんですか?」

「おねぇちゃん暇〜〜」

「ガキは帰って寝てろ」

「やだ、だって家誰もいないもん」


そんなやりとりをしていると、地面がカサカサと音を立て始めた。

「みんな、静かに」


暗闇の中、畑の隙間から無数の目が光る。

「来た……! ネズミだ!」


俺はネズミの方に手を向ける。

「風魔法〈風波ふうは〉!」

手から吹き荒れる風が数匹のネズミを吹き飛ばす。雷魔法は使えない。作物を焦がしたら大問題だ。炎も同じく封印。つまり、広範囲攻撃が使えない。

だが――それでも数が多すぎる。


「多っ……! これ、何匹いるんだよ!」

「これを相手にするのは大変よ……!」


正晴はというと怯えて座り込んだままこっちを見ている。

ののかちゃんは荷物とあきとを守るように後ろに下がっていた。


数十匹を倒したところで、残りのネズミたちは危険を察したのか、一斉に逃げ出した。

「追うぞ!」


俺と栞は三人を置いて、足跡をたどりながら森の奥へと駆け込む。

木々が密集し、ほぼジャングルのような中を走り抜けた。


「うぉ、うぇぇ、口の中に葉っぱ入った! 最悪!」

「静かに走れないの?」

「いいよな〜ネズミは。体が小さいから葉っぱとか口の中に入らないんだろうな」

「口より足を動かして。口の方が動いてるわよ」

「うるせぇ!」


木々の間を抜けた先、開けた空間の中央で、異様な光景が広がっていた。

無数のネズミが集まり、渦のように丸くなっていく。そして、形が変わり始め――やがてそこに現れたのは、人の姿。


執事のような服装をした青年。全身が深い緑色の装いで、どこか品がある。

その人物は静かにこちらを見た。


「まったく君たち……僕の食事の時間を邪魔しないでくれよ」

ため息を吐きながら、やれやれと肩をすくめる。

「まったく……君たちのせいで眉毛と爪が全部なくなっちゃったじゃないか」

そう言って前髪を上げ、爪を見せてくる。確かに――どちらもない。


「は! 知るかよ。だいたいお前が食おうとしたから止めただけだろ。自業自得だ」

俺は静かに刀を構え、栞が魔法陣を展開して構える。

「まあまあ、お二人さん。そんな警戒しなくてもいいじゃないか」

「警戒しないでって言う方が無理な話だろ」

「うんうん」

隣で栞がこくこくと頷く。


「あ〜そうでした。申し遅れました。私、コーラルと申します」

「知るか! お前はネズミ男だ!」

「あ、いや私の名前はコーラルなんですけど……」

「うるせぇ! このネズミ野郎!」


コーラルとやらが急に黙った。


「君たちと遊んでみたかったけど……また今度だね。じゃあね、お二人さん」

そう言って足元に魔法陣が浮かぶ。


「逃がすか(さないわよ)!!」

「抜刀!裂空さっくう!」

岩槍墜星ロックランス・フォール!!」

俺は刀を投げ、栞は土魔法の槍を二本撃った。


「じゃあね〜〜」

俺たちに手を振って、どこかへ消えていった。


刀と槍はコーラルに当たらず、刀は遠くへ飛んでいってしまった。

……取りに行くのめんど。


「じゃあ帰りましょ」

「いや、刀探しに行かないと……」

「…………頑張って」

「え!? ちょっと待ってよ! お願い!」

「無理よ」

「えーーーーーー俺一人じゃ見つけるの難しいよ!!」

「知らないわよ。だいたい投げたのあんたじゃない」


――投げたの俺だけど、探すの面倒くさーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ