勇者(仮)隕石から街を守れ!
その日、俺は後藤さんのしごき修行を卒業する。やっと解放だ。
「じゃあ、元気でな」
「……はい」
ヘロヘロになった俺と正晴が後藤さんの家を出ようと靴を履いていたとき――
「ちょっと待て、お前ら」
「どうしました?」
振り返ると、後藤さんは険しい顔をしていた。どうやら今、ギルドから念話が届いたらしい。内容はこうだ。
――後藤さん、聞こえますか!? ギルドです!
「何だ、こんな時に」
――空から隕石群が迫っています! 規模は百年に一度! 避けられません! 今いる人員で街を守ってください!
「隕石群……!? 百年に一度って……シャレにならないな。すぐに向かう」
後藤さんから内容を聞かされ、俺たちは急いで街へ戻った。
空を見上げれば、無数の火の玉が流れている。流星群のように綺麗だ……なんて言っていられない。あれ全部、地上に落ちてくるんだから。
そのままギルドに向かうと、入口には職員達と冒険者達が机を囲んでいた。
「あっ、お待ちしておりました! 後藤さん!」
「よし、状況は?」
「はい、これを見てください。王都から送られた映像です」
職員が机のボタンを押すと、空中に映像が映し出された。ホログラム技術だ。
そこには、無数の星がぶつかり合い、その破片がこの星に飛来している様子が映っていた。
「はぁ……俺が生きてる間にこれが起こるとはな。いいか! 冒険者諸君、市民の避難が最優先だ。市民をシェルターに避難させろ。それと街にいる結界師を全員集め、強力な結界を貼らせろ。冒険者は矛となり盾となって街を守れ! 勇者たちは今、王都に戻っている。この街を守れるのは俺たちだけだ……今、自分にできる最大のことをしろ! 行動開始!」
後藤さんの号令で、皆が散っていった。
「おい朝日、お前は俺と一緒に隕石を壊すぞ。修行の成果を見せてみろ!」
「あんな大量の隕石、どうやって破壊するんですか?」
……それに俺の刀、安売りしてて買ったやつだし……
「そうだな……まずは、そのいかにも安物っぽい刀を置け。そしてこれを使え」
バレてたか……。
「この刀は?」
「魔術が刻まれている。魔力を込めれば切れ味と耐久性が上がって斬りやすくなる。それを使いこなしてみろ」
「うす」
俺は渡された刀を腰に収め、風魔法で宙に浮いた。
「んじゃ、正晴。一人で頑張ってな」
「え〜下に残ってよ」
「無理な相談だな」
そう言い残し、俺は落ちてくる隕石に向かって駆け上がった。
まだ風魔法をうまく操れていない俺に比べ、後藤さんはすいすいと飛び回り、次々に隕石を斬り落としていく。俺もやらなきゃ……。
今回の俺の役目は、後藤さんが斬った隕石をさらに細かく斬ること。それと後藤さんが切らなかった隕石を斬る的な感じ。地味だが重要な作業だ。後藤さんが斬った後でも直撃すれば結界があってもただでは済まないし、結界がどこまで持つかも分からない。
「くっそでかいの来るな……! 雷轟ッ!」
刀を振り抜くと、隕石は真っ二つになり、破片は町の外の湖に落ちて巨大な水柱を上げた。硬すぎるだろ……。何で後藤さん切らなかったんだよ。なんかちょくちょくでかいのが斬られずに落ちて来るのはどうゆうこと?
「ほらほら、もっとでかいの来るぞ。刀に魔力を込めろ!」
「はーい、がんばりまーす」
だが数が多すぎる。
「ちょっと数が多すぎませんか!?」
「文句言うな!」
俺は空へ刀を振り上げ、稲妻を撃ち上げて小さい隕石を次々と破壊していった。
「……ちっ、多すぎんだろ」
次々と落ちてくる破片やでかい隕石を必死に斬り、砕き、逸らす。
――ふと下を見ると、栞が地面に巨大な魔法陣を展開していた。
「無重力相殺領域ッ!」
結界の前で隕石が止まっている。どういう魔法かは分からないが、おそらく重力魔法で制御しているのだろう。見たことがないから新技かな?
正晴は避難誘導の最前線で走り回り、ののかちゃんも子どもたちや老人を必死に導いていた。
「おい! よそ見してる場合か!」
……みんな戦ってる。俺も負けてられない。
「ちゃんとやってますよ!」
空を覆う隕石群。その中で一際巨大な塊が街へと迫る。
「これは……やべぇな」
「おい朝日、あのでかいの切ってみろ」
「え!? なんで俺が……」
「当たり前だ! お前、全然刀に魔力を込めてないだろ! 込めれば切れる!」
俺は風魔法で空中に足場を作り、刀を鞘に戻して魔力を込めた。巨大隕石は刻一刻と迫ってくる。
「――居合奥義・風雷一閃ッ!」
雷を纏った斬撃が隕石を真っ二つにした。
「……うっそ、あっさり斬れちゃった」
この刀、切れ味やべぇ……。
「ほらほら! それだけで満足すんな!」
俺と後藤さんは並んで隕石を切り続けた。気づけば夕方になっていた。
「朝日、見とけ。お前の師匠がどれだけ強いかを……」
そう言い、後藤さんが空に片手をかざすと
「――焔雷滅界!」
眩い閃光が空を走り、街を照らす。
「ぬお」
何ちゅう風。体の周りを風魔法で包んでいるのに吹き飛ばされかけている。熱もここまで来ていて熱い。炎と雷の合わせ技による広範囲攻撃。俺は風が収まり、空を見ると、おいおい……嘘だろ、隕石を全部消し去っちゃったよ。
だが今度はアツアツの銀色の液体が空から降ってきた。後藤さんの技で溶けたんだろうな……
「後藤さん! この液体どうするんですか!?」
「安心しろ。下で栞が重力魔法を使っていただろ? これくらいは防げる。さあ、戻るぞ!」
後藤さんは俺の肩を叩き、転移魔法で街に戻った。
「ていうか最初からそれ使えばよかったんじゃないですか?」
「無理無理、これ魔力消費半端ねぇし。それにさっき使ったのは終わりが見えたから一気に終わらせようと思ったんだから」
俺は少し後藤さんを疑いつつもやれやれというポーズを取って歩き出す。
……気づけば空は静かになっていた。残骸は遠くの山や湖に落ち、街は無事だった。
膝が笑うほど疲れていたが、胸の奥には確かな達成感があった。
その夜。広場には料理や酒が並び、人々が歌い笑っていた。
「街を守ってくれてありがとう!」
そんな声が飛び交い、俺たちは照れくさくなる。
俺は杯を掲げた。
「……俺たち、やったな」
栞は横で笑い、正晴は酒に弱いからジュースを飲んでいる。おじさんたちに絡まれて、こっちに助けを求める目をしている。ののかちゃんは子どもたちと一緒に踊っている。
後藤さんはというと、肉の塊を両手に抱えてご機嫌だ。
「肉おかわり! 酒もだ!」
――命があって、仲間がいて、街もある。
ただそれだけで十分幸せだと、心から思った。
やっぱり、この世界はなかなかにいいな。昔居たあの世界とは違う。
どうも!モヒです!
いやー後藤さん、やっぱり強いですね!どのくらいまで強く描いていいのか、実は毎日考えながら書いております。弱く描きすぎると「なんだ、後藤さんって実は大したことなかったんだな」みたいになってしまうし、逆に強くしすぎるとパワーバランスが崩壊してしまうので……調整が難しいところです。
今回は「大量の隕石から街を守る」という一話完結のお話でした。続きはありませんし、また隕石が出ることも、まあ滅多にないでしょう。(あるかもしれませんが……)
多分、このエピソードはアニメで言うシーズンのラストエピソードにあたる感じです。次は「第二シーズン開幕!」みたいなノリで書いていこうと思っております。
これからもたくさん読んでいただけると嬉しいです。どうぞ応援よろしくお願いします!
ではまたどこかでお会いしましょう〜 さようなら〜!




