牢屋の出来事。あと少しでお待ちかねの異世界だ!!
「ステータス表示‼︎」
俺の目の前には、俺の名前の下にパラメーターや才能が表示されている。下にスクロールすると「超能力はこちら」と書いてある。何このホームページ的なやつ。
まあ気になるし……って、いや、別に気になってないけど! ただ同じ牢屋に入ってるやつに言われたから開いてるだけだし!
「ぶつぶつ言ってないで、教えろよ」
けっこう怖い顔なんだよね、この人。えーと名前は……あ、確か〜面白いんだよなこれが……あーえー……思い出した、ワイセツさんだ。
もっと言うと、キョウセイ・ワイセツさん。
この世界って、あの二人といい、あの鞭女といい、このおっさんといい、なんでみんな罪の名前なんだ? もしかして、この世界の人って全員罪名で生きてるのか? どうなってんだよ。不思議すぎる。
ていうか「キョウセイ・ワイセツ」って名前、超ウケるんだけど。他にもいろいろありそう。
ちなみにこの人が捕まった罪は……ニート罪。
この世界、ニートだと捕まるってどういうこと!? おかしいだろ! どんな法律だよ!
でも、話してると案外いい人っぽい。……大変だな。
で、「ステータス表示」ってのは本人しか見えなくて、この世界に転生してきた人しか使えないらしい。
どれどれ……俺のステータスは……「不死」。
追加特性で「再生能力」もあるっぽい。うお、なんかすごくね?
「不死か〜いいな〜、それ欲しいな〜……だけどお前も。あっ嫌なんでもない」
ワイセツさんがチラチラこっち見ながら言ってくる。この世界って、スキルとかって継承できたりするの? できるなら、いろんなやつからスキルゲットできるじゃん。
一番上までスクロールすると「職業はこちら」ってあるから押してみた。……けど、エラーが出てきた。は? なんで?
不思議に思ってたら、ワイセツさんが言った。
「お前さん、まだギルド行ってないんだろ?」
「うん」
「それなら職業は出ないわ。当たり前や。ギルドで職業を決めるんだ。……暇だし、説明してやるよ」
この世界にはルールがあるらしい。
「この世界では、スキルは2つまでしか覚えられない。だけど、運がいい奴や、すごい家系の奴はレア職業ってのになれるらしい。出現率は5万人に1人くらいだな。
例えば魔法で言えば、普通は雷と炎の2つを覚えたら、それしか使えない。でも、レア職業になると魔法全般が使えるようになる。ただし、才能があっても中途半端で終わるってのが難点だ。
そして、レアの上にあるのがユニーク職業。これはな、転生者しかなったことがない。100人に1人の割合でなれるらしい。ふたつの魔法を覚えて、ユニーク職業になったら全魔法が高水準で使えて、しかも超能力まで持ってる。まさにチートだよな。……ははは……はぁ……」
「……?」
「なのに! お前ら転生者は、魔王を一向に倒そうとしねぇ!! どうしてだ!? チートでユニークで、なんで魔王を倒さねぇんだよ!!
そのせいで……俺の母さんは……」
「…………ごめんな」
「お前が謝る必要はないんだよ。……ごめんな、こんな話して。でも、知っててほしかったんだ。そして、救ってほしかったんだ。この世界を。」
「……わかった。俺が魔王を倒して、この世界を救う!!」
「ははは! お前なんかができるわけないだろ!! お前みたいなヒョロヒョロが! だけど……まあ、ありがとうな。朝日。この世界を、頼むよ」
そして俺とワイセツさんは、熱い握手を交わした。
「――盛り上がってるとこ悪いな、二人とも。釈放だ」
「後藤さん!?」
「……そして悪かったな、ワイセツ。俺も謝らせてくれ」
「いや、あんたはちゃんとやってくれたよ。幹部を5人も倒したんだ」
え……この人、めちゃくちゃすごい人だったんだ。
「ああ、そっか。君は知らなかったか。俺は元冒険者だったんだ。幹部を倒して、あと少しで魔王を倒せた。でも、魔王との戦いで左足を失った」
「え? でも後藤さんの足は……」
左足を見ていると、後藤さんがズボンの裾をまくる。
「ほら、このとおりだ」
そこには、義足がついていた。
「俺もな、魔王の右腕を吹っ飛ばしたんだよ。でも、すぐ再生されて……逆に足をやられちまった」
そうだったのか……この人、本当にすごい人だったんだ。
「後藤さん!!俺を弟子にしてください!!俺は魔王を倒してみせます!!」
「ぷっ……あはははは! ヒョロヒョロのお前が魔王を倒すだと? 寝言は寝て言え! ウケるんだけど。……まあ、弟子にはしてやるよ。大変だぞ?」
「やれます!! ありがとうございます!!」