勇者(仮)クエストに行ってきます!5
「――っ、あ……!」
滑った。
その一瞬のことだった。湿った石に足を取られ、重心が崩れ、俺の身体は湖の中に落ちた。
ドボォォンッ!!!
冷たい水が、一気に全身を襲う。
目を開けてみると――
(濁りすぎだろ!! 汚ったなッ!!)
視界はゴミだらけ。何が何だかわからない。だから――
(……久しぶりに、アレ使うか)
俺は目を閉じた。
――心眼、発動。
──《解説:心眼とは──目を閉じて、気配で敵を捉える、俺の奥の手だ!》──
静寂の中で集中する。
そして、見えた。感じた。
サメ。
あの“巨大サメ”が――とんでもない速度で泳いでいた。
(速すぎるだろ……!?)
まるで水の抵抗なんて存在しないかのように、ぬるり、ぬるりと巨体が動く。
俺のすぐ横をすり抜けるたび、水流の衝撃で体がぶわっと浮かされる。
(なんでこんな速いんだ……!? まさか……)
――やつの身体の表面から、淡く魔力が漏れていた。
(……雷を纏ってる!?)
信じられねぇ。
雷は俺の得意魔法のはずだ。それを、あいつは当然のように使ってる……!
(俺よりも先に習得してんじゃねえーーよ!!)
水中で叫んでも、声なんか届かない。
けど、俺の内側は怒声でいっぱいだった。
(ふざけんな!!)
両手を構え、魔力を込める。
このまま水中で――ぶち込んでやる!!
「――雷閃ッ!!」
バチィイイイイィィィッ!!!
雷撃が炸裂し、水の中を電流が駆け抜けた。
サメもろとも、周囲の水を焼き尽くすイメージで――だが。
(……効いてない、だと!?)
信じられない。
あのサメ、何もなかったみたいに――いや、むしろ速くなってる……!
(吸収した……!?)
やばい!!
突っ込んできた巨体を、ギリギリで回避する。
だがその勢いで、水中の腕にかすった。
(ッ……ちくしょう……!)
痛みより、怒りが勝った。
チッ、と舌打ちし、必死に水面を目指す。
酸素が足りない。肺が燃えるように苦しい。
――ゴボッ!!!
やっとの思いで水面を割り、息を吸い込んだ。
「ゲホッ! ゲホッ……ッ!」
泥水が鼻に入って、喉が焼ける。
くそ……くっっそ!!
「朝日さん!!」
「朝日!? 大丈夫か!?」
「おいおい、大丈夫かよ……!」
岸から、ののかちゃん、正晴、栞が駆け寄ってくる。
正晴が肩を貸してくれて、なんとか岸へ這い上がった。
「……あれ、雷効かないってことか……?」
俺は地面に手をついて、息を整えながらうなずいた。
あんなに雷を叩き込んだのに、手応えはゼロ。
それどころか、やつの体からはさらに強い帯電の気配が漂ってた。
(……間違いねぇ。雷を、“喰ってる”)
ギュッと、拳を握りしめる。
「くそが……!」
「おい、朝日。ちょっと腕、出せ」
「え? なんで?」
「腕、血、出てんぞ。修復魔法かけるから」
「……あぁ〜、悪いな。頼む」
正晴が修復魔法をかけてくれてる最中――俺の頭に、ある可能性がよぎった。
まさか。
いや、でも……いけるかもしれない……!
俺は、はっと顔を上げた。
「――みんな!!」
みんなが振り向く。
「作戦、思いついた!!」
「ほんと!? うまくいくの!?」
栞が目を見開く。
みんなに作戦を話すと
「うまくいくの?」
「分かんねぇ。でも……やってみるしかねぇ!!」
「……やるだけ、やってみましょう!」
ののかちゃんが真っ直ぐにうなずいた。
「マジかよ……ったく、しょうがねぇな!」
正晴も立ち上がり、息を整える。
「よっしゃ! 行くぞ、お前ら!!」
「「「おぉーーーーっ!!!」」」
「そんじゃ……作戦開始!!」
さぁ!反撃開始だ――!!




