勇者(仮)クエストに行ってきます!4
「…………」
「…………」
「……で、どうするの?」
沈黙の中、栞がぽつりと呟いた。
「どうするって……帰るに決まってんだろ……」
草の上で大の字になったままの俺が、天を見上げたまま答える。
「朝日さん、でも……あの巨大サメ、まだいますよ?」
「見えてる。見えてるから余計に帰りたい……
タキムラさん、報酬ください!」
「…………無理!!」
笑顔で言ってきやがった!!
俺はガバッと起き上がって、タキムラさんに詰め寄る。
「なぁ!あれは、見なかったことにできないのか!?」
「できねぇな」
即答。しかも目が笑ってない。ベテラン漁師の“覚悟の目”だ。
「……ちっ……もう、誰か倒してくれよ……」
「いや、それはお前の役目だろ」
横から正晴が肩を叩いてきた。
「お前、雷魔法あるし、“バチバチっと一発”で終わるって」
「そんなノリで終わるかッ!!こっちは命がけなんだよ!!」
「まぁまぁ。みなさん、落ち着いて」
ののかちゃんが苦笑しながら、スープを注ぎ直してくれる。
――だがそのとき。
「おい、見ろ!」
タキムラさんの指差す先、湖の中央。
さっきまで沈んでいたはずの“巨大サメ”が、再びゆらりと浮かび上がってきていた。
「うそ……」
「いや……見ろ、あれ……」
サメの腹に刻まれた紋章が、さっきよりも明るく、脈打つように光っている。
「な、なんだ……? あれ、光って……る?」
「まさか、雷を……吸収して……?」
「いやいや、そんな訳ないだろ……俺の魔雷法で“進化”とか、そんなチートみたいなこと……」
だが――
ゴゴゴゴ……ッ
湖面が、ふつふつと泡立ちはじめた。
「おいおい、うそだろ……また出てくるのか?」
「っ! 構えて!くるぞ!」
全員が身構えた、その瞬間――
ドッシャアアアアアアアアアン!!!!
水柱が、再び天を衝く。
巨大サメ、再出現。
さっきよりも、一回り大きくなっていた。
しかも、その頭には――
角。
「……おい、今度はサメに角生えてないか?」
「「「「進化しとるやんけ!!!!」」」」
全員の声が見事にハモった。
「や、やばい!どうする!? 雷撃つ?」
「撃ってもいいけど……効く感じがしないんだけど」
「クソが!」
「ねぇ、口が悪いわよ?」
「うるせぇ!やるしかねぇ!!」
俺はギリギリと歯を噛んで、刀を握り直す。
「行くぞ!お前ら!!」
「無茶言うなぁあああ!!」
「行くぞ!! あのサメ、今ここで倒すッッッ!!」
「「「無理!!」」」
俺だって無理だわ!!!
もう無理!!!




