勇者(仮)クエストに行ってきます!2
青湖――。
「いや! デカすぎだろ! この湖!!」
俺の叫びが、静まり返った湖に響き渡る。水面は凪いでいて、一見穏やか。でもその静けさが逆に不気味だった。
「それにしても……静かすぎない?」
「だね」
「だな。朝日の声がすごい響いてたし」
と、栞と正晴がそれぞれ相槌を打つ。
そんな俺たちの会話を聞いて、同行している漁師のタキムラさんが口を開いた。
「あぁ、昔はもっと魚も跳ねてたし、鳥も鳴いてた。こんな静かじゃなかったさ。でもな……いつからか、どこからともなく海のモンスター『レイク・ジョーズ』と、沼地に出るような『バスクロコ』がこの湖に現れるようになったんだ」
「なるほど……それって、いつ頃からなんですか?」
「そうだな……三ヶ月前からだ」
「三ヶ月!? けっこう長いこと放置されてたのか……」
「まぁな。それだけ厄介だったってことさ。それと……」
タキムラさんは言葉を濁した。
「サメの中にな、ひときわデカいのがいて……その腹に“変な紋章”があるって噂も聞いた」
「……それ、めちゃくちゃ不穏じゃねぇか……」
そう呟いた直後――
俺の全身にビリビリと“何か”が走った。
「……おい! みんな、構えろ! 来るぞ!!」
ドンッッ!!!
湖面が爆ぜ、巨大な影がいくつも水しぶきを上げて飛び出した。
「うわっ……マジかよ!? デカすぎだろっ!!」
「なにあれ!? あれが何匹もいるって嘘だろ!?」
「……まぁ、そうだな」
「「「「嘘だろーーーー!!??」」」」
あまりの迫力に、俺たちは一斉にツッコんでしまった。
「ちなみに、ボスっぽいやつはあれの二倍くらいの大きさって聞いたぞ」
「「なんであんたそんなに冷静でいられるの!?」」
俺と正晴の声がハモる。
「そりゃあ俺、このクエストをギルドに出してから、受けに来た奴ら全員に付き添ってきたから……」
「から?」
「……慣れた」
「「「「ふざけんなーーーー!!」」」」
俺たちは揃って怒鳴った。が、怒っているヒマもなかった。
「お、おい朝日!! 湖の奥から……なんか上がって来たぞ!?」
「“なんか”って……」
言いかけた俺は、それを見て絶句した。
バカみてぇにでけぇ。
ワニ……なのか? いや、形はワニだけど、サイズがもう完全にバケモノ。
「なぁ栞……これ、ヤバくないか?」
返事がない。
栞の方を振り向くと――彼女は、腰を抜かして地面に座り込んでいた。
「おい、大丈夫か!?」
「う、うん……たぶん……」
「たぶんじゃない! 無理そうな顔してんだよ!!」
「やばいですよ朝日さん!!」
ののかちゃんが半泣きで叫ぶ。
その隣では正晴が、鼻水垂らして俺の服にくっついていた。
「おい正晴! 鼻水つけんなって!!」
「む、無理〜〜!! 朝日ぃ〜〜!! 助けてぇ〜!!」
「朝日さ〜ん!!」
ののかちゃんも叫ぶ。
「……もうっ!! 退避だ!! 一回退避!!!」
「よっしゃきたああああああああ!!」
俺の「退避!」を聞いた瞬間、正晴が嬉々として叫んだ。こいつ、俺が言うの待ってたな絶対。
「いいか! 全員、丘まで逃げろ! あいつら、あそこまでは追ってこられねぇはずだ!!」
「「「了解っ!!」」」
俺たちは一斉に逃げ出した。
もう怖すぎる。見た目の圧がヤバすぎる。
これじゃあ、今までクエストに来て途中でリタイアした奴らの気持ち、めっちゃわかる。
もう無理!!!!!




