みんなとご飯食べた時の勇者(仮)の俺の話3
魔導剣士となった俺は、この日“食事当番”。
同居する仲間たちのために、腕によりをかけた手料理をふるまうことに――なるはずだった。
だが、準備に取りかかる前に事件は起きた。
正晴が、大暴れ。
「おまえ、罰として料理手伝え!!」
怒った俺は、正晴を強制的に料理を手伝わせることになった。
俺がみそ汁・おにぎり・寿司の仕込みを担当する一方で、
正晴はツナマヨの具づくり、合わせ酢の調合、そして寿司の握り担当に――!
ふざけながらも、なぜか途中から「寿司職人モード」に突入する正晴。
神?のような手さばき(※本人談)で寿司を握るその姿に、不安と笑いが入り混じる。
そんな中、ついに料理が完成!
・ツナマヨおにぎり
・味噌汁
・マグロ&サーモン寿司
という、当番とは思えない豪華メニューがテーブルに並び、全部食い終わった後のお話!!
食後――
あたたかいお茶を飲みながら、みんながまったりしていたそのとき。
「さてと。じゃあ、デザート食べない?」
栞が立ち上がると、みんなの目がキラリと光った。
「デザート!? 今日、そんなのまであるのか!?」
「ふふっ、今日は特別にね。私が作ったの」
「うわ、栞さんありがとう〜!」
「なんだ?プリン?ケーキ?……まさか芋系か?」
「正晴、静かに。邪魔しないの」
「はーい……」
そして、テーブルに運ばれてきたのは――
チョコフォンデュセットだった。
小鍋にトロトロに溶かされたチョコが湯気を立てていて、
そのまわりには串に刺されたイチゴ、バナナ、マシュマロたちがずらりと並んでいる。
「うわ~~~!!」
「なにこれ最高!!」
「こっ、これは……甘くて……美味しいやつだ……!!」
「でしょ? みんなで食べてね」
栞が笑顔で差し出す。
その瞬間、あきとの目がギラリと光った。
「よーしっ!!俺、イチゴで一番乗り!!」
あきとはイチゴの串をひったくるように取ると――
勢いよくチョコに突っ込もうとする。
だが、そのとき――
「ちょっと待ったぁあああ!!」
ののかの声が響いた。
「……」
手がピタリと止まり、あきとの顔に冷や汗が伝う。
「……なにその手? なんで……イチゴの先っちょに手があるの? あんた、どさくさに紛れて指も入れようとしてたでしょ?」
「えっ……イチゴ……持ちたいから……」
「持ちたいから? じゃないでしょ!? 串を持ちながら使って!」
「え、なんでわかったの……」
「誰だってわかるわよ!」
ののかはピシッと指をさして言った。
「私にね、最愛の弟を殴らせないで。いい? わかる?」
「ううっ……ひゃ、はいぃ……」
あきとは震えながら、おとなしく串を持ち直した。
それでも、“隙があれば手でいこう”という野生の本能は消えきっていないようで、目だけはチョコに釘付けだ。
ののかはそんな弟を、横目でじっと警戒していた。
……と、そのとき。
「……何してるの?」
――ののかの声が、また低く響いた。
「ひっ!」
全員が声の方を見ると、正晴が、こっそりチョコ鍋に自分の指をディップしようとしていた。
「す、すいませんでしたっっ!!」
すぐに両手を挙げて正座する正晴。
「……果物とかあるでしょ?」
「あります……」
「はぁ、ほんと、もー!!」
ののかはため息をつきつつ、栞から追加で配られたおしぼりで、あきとと正晴をふたたび“消毒タイム”へと追いやった。
そして、ようやく。
「今度こそ、ちゃんと食べよ? ね?」
「「はーい……」」
みんながそれぞれ串を手に取り、チョコにくぐらせて、ぱくり。
「あっま~~!!」
「うま!!」
「これ、天才のやつだ!」
「マシュマロとチョコ、やば……!」
「イチゴ最高!」
「俺はバナナが一番だな……うん、うまいなバナナ」
「ぷッ……猿」
「はぁ?」
「あら?何かしら?お猿さん?」
「……お前さ、いっつもそうだよな。いちいち刺してくるっていうか」
「刺してるのはそっちでしょ。いつも言い返してきて……ほんと、子ども」
「子ども!? それは――」
「――はいはい、ストップ!」
ののかが割って入る。
「今、せっかく甘いチョコ食べてるんですから、口まで苦くしないでください」
「……まあ、確かに」
「ほら、2人とも謝ってください」
「……悪かったな、ちょっと言い過ぎた」
「……私も。ごめん」
俺たちは謝った後、思わず笑った。
「それじゃ、ちゃんと食べようか」
甘いチョコと、温かい笑い声が、リビングを満たしていく。
とろけるような団欒。甘くて、あたたかい時間。
そんなひとときが、少しだけ特別に感じられた。




