勇者(仮)、財布からいつ間にかお金取られる
昼下がり、小屋の中にはふんわりとやさしい香りが漂っていた。ちゃぶ台の上には、湯気の立つ料理が並べられている。
「さぁ〜て、できたわよ! 本日のランチは、栞特製・野菜たっぷりミートシチューと、ふわふわ卵のサンドイッチ! あと、なぜかあったバナナ」
「おぉ〜! うまそ……てか、いつの間にこんな準備してたんだ? あと、そのバナナ、俺が完熟させて食べようと思ってたやつなんだけど………」
「ふふっ、朝ちょっとだけ早起きして作っておいたの。お昼くらい、ちゃんと栄養とらないとね」
「なるほどな……それはありがたい。で、材料費は……?」
「もちろん、あなたの財布からよ?」
「………………は?」
「うふふっ。文句ある?」
「文句しかねぇよ!!」
「うるさいわね、おいしかったらそれでいいでしょ。はい、ののかちゃん。まずは一口どうぞ」
「は、はいっ。いただきます!」
ののかがスプーンでシチューをすくい、そっと口に運ぶ。しばらく黙った後、ぱっと顔が明るくなった。
「……おいしいですっ! あったかくて、ほっとします……!」
「でしょう? 私、料理はちょっとだけ得意なのよ。あ、サンドイッチもぜひどうぞ」
「ありがとうございますっ!」
朝日もスプーンを手に取り、ひとくち口に運んだ。
「……くっそ、うまい。くそっ……自分の金で食ってんのに、悔しいくらいうまい……!」
「ふふ、もっと言って?」
「絶対言わん!!」
しばらくのあいだ、三人で和やかに食事を続ける。シチューの香り、サンドイッチのやさしい甘さ、ののかの笑顔――何もかもが、静かな午後にぴったりだった。
「ねぇ、ののかちゃん。これからも、こうやって三人でご飯食べられたらいいわね」
「はいっ。わたし……こういうの、初めてなんですけど、すごく……あったかいです」
「……そうか」
少しだけ沈黙が落ちた。けれど、それは居心地の悪いものじゃなかった。
「……よし、午後は拠点探しに行くぞ。しばらく住むことになるんだ、ちゃんと選ばないとな」
「おー、了解。まずは片付けてからね」
「よし!! これから拠点探しに行くぞ!!」
「ちょっと……張り切りすぎじゃない?」
「そうか? それに、拠点には住むことになるからな。ののか、どうする?」
「えっと……住むなら、今の家は売って引っ越すことになると思います」
「弟くんはどうする?」
「はい、一緒に住むことになるかと」
「じゃあ、大きめのところを探そっか」
「次回!『勇者(仮)新たな出会い!!』読んでね〜!」
「ちょっと待て、それ俺が言いたかったやつだろ、栞!」
「私も言いたかったです! 栞さんずるいです!」
「うるさいわね。今回、私の出番少なかったんだから、それくらい譲りなさいよ」
「え〜、まぁ……それなら仕方ないかな?」
「え〜……それならまぁ、いいですけど……」
「『次回! 勇者(仮)新たな出会い!!』読んでくれよな!(読んでください!)」
「ねぇ、私が次回予告した意味なくなってない? あと、なんでふたりでハモったのよ……」




