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勇者(仮)の俺の話  作者: モヒチャン


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28/69

勇者(仮)新しい仲間が入る

あれからどれくらい経っただろう。あの、いつの間にか頼まれていたチョコパフェを食べた日から、もう一週間と少し経った。正確には九日だ。


「そろそろクエスト行かないと、お金なくなるわよ」

「ん?ああ、そうだな。クエスト行くか」


俺たちは準備をして、家のドアに手をかけた――その瞬間、急にドアが開き、俺はバランスを崩しかけた。


「こ、こんにちは。その……言われた通り来ました。この小屋、なんですね……」

「……誰、この子?」

「この子は希々ののかちゃん。ほら、この前話しただろ?」

「え!? この子が? こんな可愛くて、いい子そうで、まだ若いこの子があんたを? ねぇ、どういうこと? お姉さん、手伝えることあったら言ってね。一応この人の仲間だから、いつでも“消せる”わよ」

「え、あ、はい……ありがとうございます?」


「ん?ちょっと待て、今めっちゃやばいこと言わなかったか?」

「え? 何のこと? 幻聴じゃない? 幻聴が聞こえるおじいちゃんは黙っててね」

「おい、ちょっと待て! 俺は28だぞ。それに幻聴じゃない、絶対に」

「もう28なんておじさんよ。幻聴ぐらい聞こえて当然ね。あら? ごめんなさい、現実を突きつけて。悲しかった? まぁ、私ほんとはどうでもいいけど、言っちゃった、ごめ〜んね♡」


こいつ、めっちゃウザい。それに最後、変な可愛いポーズしてきた。


「何そのポーズ。お前がやるとダサいな〜。それにお前と俺、そんな年齢変わんないから、お前もおばさんだぞ。よっ、おばはん!」

「あら? いいわね、その心意気。今ここでどっちが強いか決めましょうか」

「いいぞ、表出ろ! ボコボコのフルボッコにしてやる」

「それはこっちのセリフよ。ぺちゃんこにしてあげるわ」

「上等だ! 真っ二つにしてやる!」

「「あぁん?」」

「お二人とも落ち着いてください!! 私のために争わないで!!」


……え?『私のために争わないで!!』だと……何そのセリフ、男子も女子も一度は言ってみたいランキング上位のやつじゃん。俺もちょっと言ってみたいかも。


「あら? そうね、こんな奴と争うなんて時間の無駄だわ〜どうせ勝つし」

「あぁ? そんなわけないだろ。お前みたいなやつが俺に勝とうなんて百万年早いわ! 雑魚が」

「あら? 雑魚はどっちかしら?」

「「なんだと!? 雑魚はお前だろうが!!」」

「「あぁ!!?」」

「もう、お姉さんたちやめて!!」


「そうだわ、ののかちゃんに聞きましょう。どっちが強いか」

「いいぜ? 決まってんだろ、なぁ? ののかちゃん」

「そ、その……」


考えてるな。俺に決まってんだろ? 戦闘経験もあるんだし。


「その……どっちも強いです!! だから、ご、互角です!!」


「っ!?……」


俺たちは同時に目を合わせた。……この子、今ファインプレーをしたな。片方を選べば喧嘩になる、それを見越して互角って。なんて子だ。全て読んでいたかのように。


「まぁ今回はこれくらいにしといてやるよ」

「それはこっちのセリフよ! 命拾いしたわね」


ののかがホッと息をつき、俺たちはちゃぶ台の周りに座った。


「悪いな、これしかないけど。あっ、これ粗茶な」

俺はののかにさっき飲もうとして忘れていたお茶を出した。

「あ、お気遣いなく」

「ねぇ? 私にはないの? お茶」

「お前にやるお茶はない。……あっ、おい、ちょうどいいのがあるぞ」

「え? なになに? 何があるの?」

「じゃあ手ぇ出して」

「え? あ、うん」


差し出された手に、さっきまで抽出してたティーバッグを水の入ったコップに入れて渡した。


「……ねぇ? 一応聞くけどこれってもしかして」

「ん? どうした? 多分その“まさか”だと思うよ」

「……死になさい、重力魔法スローグラヴィティ!!」

「のぉ!? やめろぉぉぉ!!」


しおりがまさかの重力魔法でティーバッグを俺の目に押し込んできた。……やばい、めっちゃ染みる。壁に押し付けられてるから動けない。くそが……。


重力魔法が解け、俺は壁からズルっと落ちた。

「……っくそ、染みる……ティーバッグは目に入れたらダメって常識だろ……」


しおりはニヤニヤ笑いながら腕を組んで見てくる。ののかはオロオロしながらタオルを持ってきてくれた。


「だ、大丈夫ですか!? あの、タオル……」

「おお……ありがとな、ののか。お前、いい子だな……誰かさんみたいなクソ野郎と違ってな」

「あら? 誰のことかしら?」

「安心しろ、言われてる本人が一番わかってるって」

「そうなの? なら私じゃないわね」

「へぇ〜君はそう思うのか。まぁ、認めたくない気持ちは俺もわかるよ」

「あら? それってどういう意味かしら?」

「どういう意味だと思う?」

「あの!!」


ののかちゃんが俺たちの間に割って入ってきた。……悪い、居心地悪くしちゃったか。


「どうした?」

「えっと、その、この前の話の答えを……」

「そうだったな。じゃあ教えてくれ」

「はい、その……」

「ちょ、ちょっと待って」

「なんだよ。どう考えても今いいところだっただろ。どんなクソ野郎でもわかるわ」

「あら? ごめんなさいね、気づけなくて」

「そうだったな。じゃあ教えてくれ」

「はい、その……」

「だ〜か〜ら〜、その話って何なのよ〜? 教えなさいよ」

「いや、この前この子と話したとき、最後に俺が『パーティに入らない?』って聞いたんだ」

「え? そうなの? ののかちゃん、仮で入りなさい」

「いや、なんでだよ」

「だってあなたがリーダーでしょ? それに危険なんだよ? 子供なのよ? お金がなくてこの仕事しかないなら、できるだけ危険じゃないクエストにして、ちゃんと弟さんを養えるぐらいまで働いたら、この仕事から足を洗いなさい。それがこのパーティにおけるルールよ!!」

「まぁ、それはそうだな。……ていうか、まだののかが入るって決まったわけじゃないだろ」

「その、パーティに入らせてください!」

「え? あ、や、なんか……ごめん。言わせちゃった感じがするんだけど」

「いえ、別に。その、何でもします! 荷物運びでもしますので、お願いします!!」

「なら、これからお願いね。ののかちゃん、これ一応契約書ね。ここにサインしてもらうだけど……」

「けど?」

「ののかちゃん、今何歳?」

「えーと、16です」

「やっぱりそうか〜」

「それがどうしたの?」

「ほら、未成年じゃん。未成年だと親と一緒にサインしなきゃダメなんだよ」

「あ〜、なるほど」

「じゃあ、ののかちゃん。両親、今度連れてきてくれる?」

「……いないです」

「栞、この子、両親いないんだ」

「あっ、ご、ごめんなさい……」

「いえ、別に大丈夫です。慣れてますので……」

「…………」


どうしよう。親の許可なしにはできないし……。


「おい、栞」

「な、何よ」

「お前、この子の保護者になれ」

「え!?」

「え!?」

「どうして!?」

「俺よりもお前の方がいいだろ。第一、この空気にしたの、お前だしな」

「ま、まぁそうね。わかったわ。私が戸籍上、この子の保護者になるわ。それでいいかしら? ののかちゃん?」


少し考える仕草を見せた後、ののかは小さく笑った。

「……いいんですか? 栞さん」

「いいわよ。でも私、そんなにお金持ってないし、食事代とか生活費は割り勘になるわ。それでもいい?」


……なんだこいつ。生活費とか言ってるけど、子供にお金払わせる気か。でもまぁ、俺も割り勘になってたかもしれないな。育ち盛りの子供二人は結構お金かかるし。


「なら、俺もお金出すよ。少ししか出せないけど」

「あっ、お二人ともありがとうございます! 私、頑張ります!!」


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