ライバルの誕生
――静寂。
観客のざわめきも、風の音も、まるで消えたかのような静けさ。
俺と栞、ふたりの気配だけが、この空間を支配していた。
「――いくよ、最終詠唱」
栞が、杖を真っ直ぐに掲げる。空気が震える。……マジでヤバいやつだこれ!!
「『大地よ、我が声に応えよ。』」
え、長い長い、詠唱長いって!どう考えてもヤバい魔法来るやつじゃん!!
「『万象を砕く岩の怒り、降り注げ、滅びの槍――』」
きた!やばいやばいやばい!!俺のターンどこいった!?まだ俺喋ってねぇぞ!?
「『――アルティメット・メテオランス』」
ドォォォォン!!
空間が歪む。栞の目の前に、巨大な岩槍――いや、あれはもはや山だろ!?山が浮いてる!?こっちに突っ込んで来る。
「嘘だろ!?アニメでもそんなデカいの見たことねぇぞ!!」
でも、俺は――
「上等だ、バッチ来ぉぉおいぃぃぃぃ!!」
腰を落とす。鞘に収めた刀に、全神経を集中させる。俺は今、ゾーンに入った。
俺の必殺技、今こそ見せてやる――!
「居合奥義・風雷一閃ッ!!」
地面を思いっきり蹴った瞬間――
ドガァァァァァン!!
風のように、雷のように。俺は一瞬で栞との距離を詰める。
「えっ――速っ――!!」
詠唱の余韻を、斬る。彼女の杖が動くよりも速く――
「――一閃!!」
ズバァァァァン!!!
時間が止まったかのような感覚。次の瞬間、大地を貫こうとしていた“アルティメット・メテオランス”が――真っ二つに割れた。俺が、真っ二つに斬ったんだ。
「……う、そ……」
栞の目が驚愕に染まる。そのまま、彼女は膝をついて、光にきえてゆく。
「勝負あり!!村谷朝日、勝利!!」
観客席が、一瞬の静寂のあと、爆発するように盛り上がった。
「よっしゃあああああ!!やったあああああ!!!」
バタッとその場に倒れ込む俺。魔法とか関係なく、全力使い果たした感ハンパねぇ。
栞が、ゆっくり近づいてくる。
「……負けた。でも、悪くなかった」
「こっちもだよ。マジで心折れかけた。あんた、すげぇわ」
「……ありがとう」
ちょっとだけ微笑む栞。おぉ、かわいい。さっきまで命狙われてたけど、今ならギリ許せる。
「次は負けないから」
「そっちこそな」
俺たちは熱い握手を交わし、バトルは終わった。
――でも、俺はまだ知らない。
この戦いが、“本当の戦い”の始まりだったってことを。




