2.運命の出会い
「......あれ?」
見慣れない天井。
スパイなだけあって、朝に強い私は即座に起き上がった。
いつものパジャマ。
見慣れない部屋。
そういえば私、寝る直前に......
「凛然結恋さん?」
彼の声が蘇る。
そうだ。私、正体バレたんだ。
これから私、どうなるんだろうな。
それにしても、おしゃれな部屋だな
このままパジャマでいるのもアレだし、あそこの、クローゼットがありそうなところで洋服を探そう。
扉の向こうには、たくさんの男性服があるクローゼットが15mほど奥まで続いていた。
「何これ」
クローゼットを漁っていたら、奥からは大量の女性服が出てきた。
こんな奥にしまうなんて、まるで女性がいることを隠しているみたいだ。
テキトーな服を着て、部屋を出た。
廊下へ通じているであろう扉は、ひとまず触らない。
日光が差し込む窓は、叩いても押したり引いたりしても、びくともしない。
「鏡か......?」
鏡の置いてある机を退かすと......
「ビンゴ」
奥への隠し通路があった。
階段を進むにつれ、光が見えてくる。
隠し通路とはいえトラップがあるかもしれないから、足下は、落ちていた懐中電灯で照らしている。
ある部屋に着くと、上から声が聞こえてきた。
「ねぇ、まだ起きないのかな」
「ああ、凛君が連れてきた子____凛然結恋のことだよね」
私のことを話している......
じゃあ、彼の名前は凛......?
「そうだよ。凛君、睡眠薬飲ませたりしてないよね......?」
「してない、とは言いきれないね。どんな目的かは聞いてないけど、絶対彼女を連れてこないといけないみたいだったから」
「そっか......」
この2人は私について知っていることはなさそうだ。
部屋を見回す。
あるのは棚ぐらいだ。
でもこの棚の中には、特に重要なことは入っていないだろう。何せ、私みたいな部外者が寝かせられた部屋の隠し部屋なのだから。
ダメ元で棚を漁る。
......何か入ってないかな
出てきたのは何らかの資料。
めくってみたが、死体の写真が出てきてすぐに棚に戻した。
家族で亡くなったのか、男性と女性と女子が並んで倒れていた......と思う。
スパイとはいえ、好きで死体を見ている訳でもないし、慣れてもいない。
家族......死体......
一瞬頭の片隅で思うことがあったが、気を取り直して棚を調べることにした。
「ん?」
調べていると、棚の底が不自然なことに気づいた。
見た感じ、厚さが合わない。
押して見ると、簡単に外れた。
「何これ」
そこには、ある人物についての資料が沢山出てきた。
年齢から性格まで具体的に、全て調べてある。
寒気がした。
その人物とは私だった。
写真もある。
とういうことは彼____凛は、最初から私が狙いだった......?
一体何故?
しかも、凛が仲間らしき人たちに事情を話していないのも気になる。
「ねぇ、さすがに起こしに行こうよ」
また上から話し声が聞こえてきた。
私のことを言っているのだろう。
資料を全て元に戻して、部屋を出た。
鏡も元の位置に戻した。
......バレることはないはず
髪のセットをしているように装っていると、扉の開く音がした。
「君が凛然結恋さんだね」
「はい」
私は堂々とその男性へ近づいた。
いろいろと家の中を案内してもらう中で気づいた。
ここは地下だ。
窓だと思っていたものも日光だと思っていたものも演出であり、飾りだった。
作り込みがとにかく凄い。
別の組織に場所が特定されても手放したくないと思うほどきれいだ。
最後に案内されたのは広い部屋で、キッチンや大型テレビ、大きな木製テーブル、多くの椅子がある。
他にも諸々あるが、今はそこにいる人物に目がいった。
「あ、君が凛然結恋ちゃんだね!」
「はい」
「僕は......とりあえずAって呼んで!」
〖コードネーム〗
裏組織の人間は基本的に本名を晒していない。
本名がバレないようにコードネームで呼ぶのが基本だ。
「はい」
「ふーん......君が凛然結恋か」
後ろを振り返ると、腕を組んだ男性がいた。
「白兎優美がお世話になりました」
頭を下げた。
「こちらこそ。城山蓮斗が世話になったな」
彼は城山蓮斗の友達だったはずだ。
......グルだったのか。
「貴方のコードネームは?」
「Yだよ」
「ふーん......」
顎に手を当てる。
コードネームには何か共通点があるはずだ。
全ての人物にコードネームを聞いていった。
「俺はN」
「俺はH」
「俺はK」
分からない。共通点が見つからない。
「そういえば彼......城山蓮斗は?」
部屋に見当たらない凛のコードネームも気になる。
「ああ、彼はRだよ」
ますます意味が分からない。
そこで、自分を指差して言った。
「私は?」
「君は......Yだね。Y君と被っちゃうけど」
......私はY?
AとNが話し合っていた。
「被ったままでいいんじゃない?」
「それもそっか」
「そういえば結恋」
唐突な呼び捨てに思考が停止する。
「はい」
反応が遅れた。
早々ミスをするなんて......まだ疲れが取れていないのだろうか。
それを察したのか、Kは笑って謝ってから言った。
「お腹空いてない?」
......情けないが空いている
どう答えるべきか。
するとAが近づいてきて、私の肩に手を当てた。
「遠慮しなくて大丈夫だよ。ほら、よく言うじゃん、腹が減っては戦ができぬ、って!」
顎に手を当てる。
「確かに」
......ここは頂こうか
するとNが笑った。
「俺たちは何の戦をするのかな? まぁいいけど。持ってくるからちょっと待ってて」
部屋を出ていくのを見届けながらAに尋ねた。
「ねぇ、Rってどこにいるの?」
Aは苦笑いしながら答えた。
「あー......自室だと思うよ」
Aは、横のKに向かって言った。
「呼びに行った方がいいよね......?」




