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タイトルとかとか、いただいて書きました。

吊り橋効果を異世界で試してみたら悪役令嬢が釣れた件

 



 気づいたら、いわゆる異世界にいた。


 小説投稿サイトとかアニメとかで有名なアレだ。

 どうやら俺は中の上くらいの伯爵家の嫡男で二五歳。

 身体が弱く寝たきりの生活。

 先日大熱を出して…………事切れたら、俺になっていた。

 意味がわからないな。

 違う世界で生きていたはずなのにな。


「アナスタージオ坊ちゃま」

「……この年齢で坊ちゃまって呼ぶもの?」

「はい」


 老齢の執事が真顔でそう答えたけど、マジ?

 俺がその坊ちゃまじゃないと伝えると、伯爵家の人々は俺の頭を心配した。

 やっぱそうなるよな?

 ってことで、記憶喪失ということにシフトチェンジした。




 半年ほど社交界の勉強をし、マナーも学び、ダンスで軽くメンタルが死にかけ、どうにか表に出る許可を得た。

 今夜は満を持して夜会に参加する日だ。


「アニーちゃん、本当に本当に大丈夫!?」

「この年齢の男を愛称で呼ぶもの? 親が」

「はい」


 またもや老齢の執事――ジョンに真顔で答えられた。マジ?


「アニーちゃん! 聞いてるの!?」

「聞いてますよ、母上。大丈夫ですって」

「母上だなんて! 前みたいにママって呼んでちょうだい?」

「……謹んでご辞退させていただきます」


 母上がワッと泣き出したけど、アレは嘘泣きだから放置でいいとして。

 父上の難しい表情が気になる。


「どうされました?」

「いや、お前が元気になったなら、そろそろ跡継ぎを……な?」


 つまり、夜会でいい嫁探してこい、と。

 ふと鏡を見る。

 金髪サラサラストレートロング。

 海のように透き通った青い瞳。

 長らく病人だったこともあり、儚い雰囲気。

 典型的な西洋人の色合いに違和感しか覚えないけど、こっちではかなり人気のある見た目らしい。


「行ってまいります」


 両親に挨拶をして馬車に乗り込んだ。


 ――――さて、嫁探しか。


 西洋の夜会は、いわゆる『街コン』や『婚活パーティー』だよな?

 色んな女性と話してアピールしつつ、男性同士でも話して交流も取らないといけない、と。

 なかなか忙しくなりそうだ。




 …………驚くほどに忙しかった。

 何だあれ。

 肉食女子度合いが半端ない。

 俺が社交界に出たのは今日が初めてだったこともあり、淑女のフリをした肉食少女たちにドワッと囲まれた。

 いつも真顔の執事いわく、家が随分と裕福なことが理由のひとつとしてあるらしい。

 あとは、やっぱり見た目なんだとか。


「二十人くらい話したが、ほぼ覚えてないんだよなぁ」


 十六歳から十八歳という年齢は少し若すぎた。まだまだ女の子でいて、いわゆる少女と言える年齢なのだ。

 なんとなく、恋愛感情なしで嫁に来いとは言えない気分。


 前世(?)では結婚願望がなかった。

 今世でも願望はないが、結婚必須の雰囲気。

 さてどうしたものか。


「結婚しないとかは……」

「ありえません」


 ――――だよなぁ。


 記憶喪失と言いつつ完全に別人と化した俺を拒絶せず、気持ち悪がりもせず、勉強したいと言えば教師を用意してくれたりと積極的に関わろうとしてくれている。

 感謝しているからこそ、出来ること、返せることはしたい。


「次の夜会で決めるか」

「おや? 何かご計画でも?」

「まぁな」


 とりあえず、恋愛の定番『吊り橋効果』で良さげなご令嬢を捕まえよう。できればあまり年齢差がない方がいいが、どうなることやら――――。


 心と現実を一致させたい心理、いわゆる『吊り橋効果』で、ドキドキしているから、この人のこと好きなのかも!の現象を次の夜会で試すことにした。




 ――――ん? なんでこうなった?




 二度目の夜会で、同じくらいの年齢の子がいないものかと探していた。

 執事は、その年齢ですと難ありの性格か、家格があまりにも低いからです。と言い放っていたが、まぁなんとなく気付いていたので言ってやるなと制しておいた。


 庭園が何やら騒がしいので、休憩がてら覗きに行った。

 木陰からちょいと様子をうかがってみると、真っ赤なドレスを着たドリルのような金髪縦ロールの女性が、薄ピンクのふわふわドレスを着た少女に平手打ちをカマそうとしている瞬間だった。


 おわ。あれ、ガチの悪役令嬢じゃん。

 これを止めれば吊り橋効果抜群だろうなぁ。だが、ふわふわピンクの子、めっちゃ若いってか幼いしな……。

 そんなことをつらつらと考えていたら、騎士服を着た男が走って止めに入っていた。


 出遅れたし、まあいいか、とそのまま木陰でやり過ごそうとしていた時だった。

 騎士にこっ酷く怒鳴られた悪役令嬢が走り出し、階段で躓き落ちかけるというなんとも『吊り橋効果』なタイミング。

 ついつい走って助けてしまった。


「――――っ!?」

「大丈夫か? 怪我はないか?」

「っ、ええ」

「……ん? 泣いてるのか?」


 あぁ、なるほど、あの騎士が好きなんだろうなぁ。ツンツンしかできない年頃ってあるもんな。


「アンタ、可愛いんだからさ、刺々しい態度で接したり、誰かをイジメるより、素直に好きって言ったほうが、アンタ自身を見てもらえると思うぜ?」


 抱きかかえていた腕がプルプルしてきた。

 いかんせんちょっと前まで病人だったこの体、ドレス含む健康体女性を持ち上げて何処かに運ぶのは諦めた。

 悪役令嬢を階段に座らせ、足首をくじいてないかの確認をし、頭を撫でてハンカチ渡して立ち去った。

 立ち去ったんだよ。

 特に名前も教えてなかったし、俺も悪役令嬢としか認識してなかったし。


「なんでここにいんの?」


 夜会から家に帰ったら、悪役令嬢が我が家のサロンにドーンといた。

 真っ赤なドレスを着て、真っ赤に頬を染めて。


「アニーちゃんに、九死一生の場面で助けられたから、お礼に来てくださったそうよぉ」


 人前でもアニーちゃんって呼ぶのかよ……。


「いや、うん。そうだけど」

「貴方、こここん婚約者を探しているのでしょうぅぅ?」


 噛み噛みだな?


「わわわわたくしが、公爵家令嬢のわたくひが! 婚約者になって差し上げますわ!」


 噛み噛みだな?


 とりあえず、吊り橋効果で悪役令嬢が釣れた。


 


 ―― fin ――




『タイトルいただいて書きました』シリーズ!

タイトル作:花鳥風月様

https://mypage.syosetu.com/2037901/


素敵なタイトル、あじゃました!




ブクマや評価していただけますと、作者のモチベになり、小躍りします!m(_ _)m


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― 新着の感想 ―
[一言] 他作品が面白かったので(棒読みの第二王子に求婚される話)読みに来ました(*´ω`*)そっちもすごく良かったけどこの作品も凄い好きです! 悪役令嬢がかわいいですー!!
[一言] ハッピーエンドまで読みたかった お話の冒頭としてとてもよかったです 転生してなかったら(坊ちゃん含め)大分やばそうな家族ですね(笑
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