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テイラード家の一族(・∀・)

知らない間に囲いこまれているようです

作者: あひる隊長

 メルカシア王国宰相の長男、パルテール・テイラードはメルカシア王の信頼も厚い父親によく似ていて、幼いながらも優秀で、父親には無い剣術の才能も素晴らしく、将来は父親の跡を継いで宰相を目指すか、国王陛下の盾となる騎士となるかと将来が楽しみな子供であった。



 超モブ顔と言う事を除いては。



 宰相閣下のお顔は100人の村人の中に紛れ込ませたら間違いなく宰相とは思われないだろうコンテスト第1位にも選ばれないであろう。何故ならば存在感が無さすぎて数にも入れられない、ひょっとして、すごい隠密スキルがあるのでは無いかと思うくらいのモブ顔だった。強いて説明するなら子供が一番最初に落書きするような( ・∇・)な顔。


 ちなみに宰相閣下と妻は従兄妹同士で、そんな二人の息子も勿論( ・∇・)な顔である。


   ◆◆◆


 僕のお姉ちゃんにはずっと小さい頃から決まっている婚約者がいる。

それはこの国の王子様だ。

 僕は王様は嫌いじゃない。だって王様は僕のお父様と仲良しだし、僕の大好きなアンゼリカのお父様でもあるからだ。

 王子様だってそんなに嫌いじゃないけど、大好きなお姉様を独り占めしちゃうのはずるいと思う。前までは僕も一緒にお茶を飲んだり剣のお稽古もして下さったりしていたけど、最近は2人で会うことの方が多いんだ。


 「僕だってわかってるんだよ」


 今日は王子様の妹君のアンゼリカが遊びに来てくれている。アンゼリカも2人のお邪魔になるからって相手をして貰えないらしく、最近は1人で来るんだ。本当はアンゼリカ様って言わないといけないんだけど、「様なんて付けたらもうお話してあげない!」って怒られた。


 「何がなの?」


 アンゼリカがお姉さんぶって僕に聞いた。実際お姉さんなんだけど...


 「王子様が僕のお姉様をとってもとっても大事にしてくださってる事だよ」


 あ、子供っぽくむくれちゃった。僕が唇をとんがらせるとアンゼリカは決まってクスクス笑うんだ。とってもかわいいんだけどなんか悔しい。


 「私も、よ。」


 ほぅ...とため息をつくアンゼリカ。ナイショだけどお姉様よりずっとキレイなんだ。


 「私もアルティナお姉様は大好きよ。優しいし、お勉強もお裁縫も上手だし、とっても綺麗なお声で私をほめて下さるの」


 うんうん。そうなんだ。お姉様はとってもキレイなお声をしてるんだ。

 僕はアンゼリカにお姉様をほめられて思わずニコニコしてしまう。するとアンゼリカは突然悲しそうな顔になったんだ。


 「アルティナお姉様はサイラスお兄様とご結婚なさったら私のお姉様になって下さるわ。だけど...私もいつかは誰かの元にお嫁に行かないといけないの。」

 「そうか。アンゼリカも誰かのお嫁さんになっちゃうのか...」


 僕はちょっぴり肩を落としてため息をついた。そしたらアンゼリカは突然立ち上がってちょっとこわい顔をして僕を見た!


 「私がどこかにお嫁に行ったらパル君1人になるのよ!?」

 「えぇ!?」

 「私がお嫁に行った先の人は私が他のお家に遊びに行くのを嫌がるかもしれないわ。ひょっとしたらすごくすごく遠くに行くかもしれないし」


 僕はそれを聞いてすごく悲しくなって涙目になった。


 「大丈夫。パル君はお勉強頑張ってるでしょ?」

 「うん...」

 「剣術だってすごくいいってお兄様は言ってたわ」

 「うん!」


 そうだ!サイラス兄様(サイラス様がそう呼べって)はすごくほめてくれた!

 僕は少し元気が出て背筋を伸ばした。


 「けど、そしたらアンゼリカは遊びに来てくれるの?」


 僕が頭を傾げるとアンゼリカはまたクスクス笑う。


 「パル君が私をお嫁さんにしてくれたらいいの」


 そっか!そうしたらアンゼリカはずっと僕と一緒にいてくれる!


 「パル君は私のお父様に『アンゼリカをお嫁さんにしたい』って言わないといけないのよ。そうね...騎士団長じゃ弱いか...将軍...将軍かパル君のお父様みたいな宰相でもいいわ」


 うーん...と頭をひねるけどお姫様をお嫁さんにするんだからそれぐらいにならないとね!


 「うん!わかった!」


 僕はにっこりして頷いた。


   ◆◆◆


 「アンゼリカ」

 「あら、サイラスお兄様」


 今日のサイラスお兄様のお顔も渋い。最近私に会うと大抵このようなお顔をしている。


 「どうかなさいました?ハンサムなお顔が台無しですわよ」


 私がクスクス笑うとますます渋いお顔になる。何なのかしら?全く...


 「今日、アルティナの邸に行ったらしいね」

 「ええ、行きましたけど。正確にはアスパル様の邸、またはテイラード邸ですわ」

 「...狙いはパルテールか...」

 「あら嫌だ、私の婚約者様をそんなふうに呼ぶなんて」


 マテのポーズ。もう!私、犬ではありませんのよ!全く失礼な。


 「アンゼリカ、お前いくつになった?」

 「妹の歳もお忘れになったの?15よ」

 「パルテールの年齢は?」

 「あらヤダ。大好きな婚約者様の弟さんよ。全く、お兄様はアルティナ様しか見ていないんだから」

 「...確か...8歳くらいだったよな...」


 お兄様がキラキラ王子らしからぬジト目で私を見る。親公認のストーカーが何言ってるのかしら?私、お兄様は最近アルティナ様から振られるんじゃないかとやきもきしてるのを知ってるんだから。


 「パル君は将来有望よ。お兄様だって言ってたじゃない」

 「だからって、あの...シンプルな...無害そうな...癒し系の...」

 「アルティナ様にソックリじゃない」


 あぁ、確かに。


 「ちなみに今年8歳だから」


   ◆◆◆


 アンゼリカ様のご結婚が決まったのは彼女が26歳の夏。もちろんお相手は最年少で宰相補佐になったパル君。二人の間にはほどなくしてアンゼリカ様によく似た双子の女の子が生まれたそうな。

アンゼリカ様の遺伝子強し

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