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王都の夏 急変の予兆 2

アズーナ王国は、なろう処女作「いじめ対応マニュアル………」の舞台です。

アゼリアちゃんは、2作目の主役でした。

「侯爵令嬢のスキャンダル」です。


で、描写が長くなるのが、私の悪い所です。

キャロライン、頑張れ

アズーナ王国は、獅子王と闇の女神の建国伝説がおとぎ話の様に伝わる歴史ある国である。


その王子フェーベルトが立太子し、アゼリア侯爵令嬢との婚姻も結ぶ。

キャロラインは、アズーナ駐在大使の父と共に、祝宴に出席である。


立太子式も、その後のご結婚式も、荘厳で素晴らしいものだった。


フェーベルト殿下は、ややふっくらとしてはいるが、整った顔立ちで、何よりオーラがある。次代の王としての風格や押しの強さが感じられる堂々とした青年。

片やアゼリア妃は、国一番の美女であり、〈オシャレ番長〉の異名を取った流行の先端を行く女性。


衣装の素晴らしさは言うべくもなく、その由緒ある王冠と錫杖、ケープは、何物にも替えがたい。

式場や祝宴の会場にも、夏の趣向を凝らし、厳かな中にも華やかで気の利いた誂えとなっている。


文化的には、アズーナとエラントは近い。だから、キャロラインが悶絶しかかりながら、式や祝典、祝賀会に出席したのは、言うまでもない。


今夜は祝宴舞踏会。

祝典は、一般貴族の席で遠くから見ていたキャロラインだが、今夜は、父と共に王太子夫妻に挨拶した。


「キャリー、改めてだが、君の父は偉大だ」

婚約者のチェイニーが興奮気味に繰り返す。王太子夫妻に挨拶出来てのぼせ上がっているのだ。


「うふふ。

じゃ、私を大事になさい。

アゼリア妃にうっとり蕩けちゃったのは、減点よ」


「見てたか。

だってさ、凄い美女だよ!

あんな人エラントには居ないよ!」


「困った人ねえ。お父様に聞こえてよ?イザーク・チェイニー。

貴方は私の婚約者。いくら私の色気が足りないからって、浮気は禁物」


「う、王太子妃を褒めたって、浮気にはならないよ!」


傍から見れば、恋人同士のじゃれ合いだが、キャロラインの腹の中は少々複雑である。


イザークはいい人だが、凡庸で、キャロラインが好む丁々発止のやり取りは難しい。言葉の裏など取れずに、まんま受け取る。


まあ、夫にときめくのは人生の一瞬だ。この青年なら、仕事も夫としての務めもきちんと成すだろう。オージエの様な刺激は、炭酸水と同じ。いつかはただの水になる。


(いえいえ、

何でここでオージエが例えになるのよ、キャロライン!)


歓声が沸いたので、ホールを見遣ると、ファーストダンスを王太子夫妻が踊り始めた。


ここでも、妃の美しさと踊りの見事さが際立って、未婚も既婚も、男たちは、ほう、と見蕩れる。

そうでない男たちは、連れ立った淑女達が羨望の目で瀟洒なドレスや装飾品を見つめ、いつ強請(ねだ)られるかと、ヒヤヒヤしていた。


「奥様、ご存知?王太子殿下と妃殿下は、相愛なのですって」

「ご覧遊ばせ、殿下の甘い表情!

会議で賢人を震えさせる御仁と同じとは思えませんわ」


(相愛、か)


「キャリー、ごめん。

ダンスは出来ない。

殿下の明日の日程を詰めてくるよ」

既に諦めているキャロラインは、

行ってらっしゃい!と、手にキスを落としてもらって別れた。


そんな会話に、少々寂しくもなるが、

さあ!おとつー代表、いざ参る!

と、様々な貴族や外国の貴人に挨拶して回ることにした。



(あれは、妹姫のムシュカ王女)

なかなかの賢姫と聞いている。

女性だけど、西宮を賜ると聞いたわ。降下なさらず王家に据え置く姫の話は是非伺いたい。

(……お父様のコネで、ご面会出来ないかしら)

今週の茶会が狙い目ね!



(こちらは、ナダルカンドの王子?あらー素敵な衣装!)

ヴィルム殿下の顔が浮かぶ。

(……うむ。この衣装を殿下が着る……似合う。でも)

キャロラインは頭の映像を黒板消しで消した。

(危ない危ない。国政に関わるネタはご法度、と)


挨拶できる貴族には、父を担ぎ出して名乗りをし、次、次、とせっせと

メモしていく。

この日の為にと、小さな小さなメモ帳を作ったのだ。


(会場の写真は、お父様から公的な物を頂こう)

既におとつー五回分位のネタは揃った。


ふう、と一息ついて、グラスを貰う。


「今晩は。ジュゼッペ大使の令嬢とお見受けしたが?」

(あら、エラント語)

大陸で通じる共通語でない事で、キャロラインは無造作に振り向いて、


(び、っくりしたっ!)

「エ、エルンスト殿下……!」

そこに立つのは、翠の夜会服を身にまとった王子である。


お付きは少し離れた場所から殿下を見守っているようで、独りで壁際にいらっしゃったのだ。


「ご、御機嫌よう、殿下」

「精力的に活躍していたね、おとつー代表」

「!」


ぼっ、と顔から火が出る。

くくくっ、と殿下は忍び笑いで、

「大丈夫。私は君を知っているから分かった事で、他の人には取材だとは悟られてないと、思うよ」


(なぜ、そこで、切る?)

と、心で突っ込むキャロラインである。

「いやー、久しく学園に行っていないから、懐かしくてね」

(いえ、懐かしむ程、ご面識ないですよね!)


なぜ、何故、殿下は私に構うの?

ここは学園じゃないのよ?

夜会、しかも、アズーナの。

貴方は王子、私は子爵の娘

場を弁えたら、私は今凄く、

(まずいんですけどー)


「私がミリア嬢の天敵だと、ご存知ですか?」

「オージエは私の耳だよ……分かっている」


ミリアか、と、エルンストは呟いて、

アズーナ(ここ)に連れていたら、大変だったな。

あの麗しい妃殿下と張り合おうとしただろうね」


この人は、何が言いたいのだろう?


「私は言わなくてはね。

妃になれば、君の方が美しい、って?……なれば、ね。なれば」


「殿下?」


王子は少し腰を屈めて口を覆った。

具合が

悪いのかしら……


程なく王子は、すう、と息をして、傍らのキャロラインに尋ねた。


「少し、話せる?」

「もう、話していますわ」

にっこりエルンストにキャロラインは向き合う。


「……ありがとう」

エルンストは柔らかく喜んだ。




次回もエルンストのポンコツです。


オッサン達も回収します。

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