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公爵令嬢の企て

誤字報告頂きました。

文意が伝わるように直しました。

ありがとうございます。

夏の夜の庭からは、優しい風が入る。

ひとつのテラスが無人である事を確認して、コールはミリアを誘う。


「月の光に映えて、貴女はドレスをも煌めかせるのですね、美しい人」


「お上手ね。

貴方の方が、月に嫉妬される位、綺麗よ」


互いに互いをこう想っている。

隣に据えて、心地よい人物だと。


「婚約者とは順調?」

「よして下さいよ、あんな子供」

「でも、女は急に成熟するものよ。……貴方が思うより、()()の成長を待っている方がいるかも知れなくてよ」


テラスの籐の椅子に座る。

ドレスにシワがつかないよう、クッションを動かした。

互いに、近いとも遠いとも、とれる距離に居る。ミリアとて、王家に嫁ぐ身だ。醜聞は不味い。


「どうなさったんですか、急に。

あれがどうあろうと私の心は」

「それは悪手よ、()()()()()


名前呼びはしない。

コールは、ミリアが何か企てていると察した。

そして、密室ではないこの場に、ふさわしいように、伝えてくる。


「結婚なさるまで、後4.5年はあるでしょう?その間に()()は、沢山の男性に会うのよ?

貴方より相性の良いお相手が見初めるとも限らないわ」


は、と、コールは呆れた表情で

「野暮ったい田舎娘に?」

「蓼食う虫も好き好き」


ミリアは、ヴィルム王子の、蕩けるような表情を思い出す。

そして、屈辱の思いも。


長い脚を組んで、へらっとコールは嗤い、指を組んで、その碧い瞳でミリアを見つめる。


「何がしたいんだ?」


ミリアは扇の下の口元を歪ませて

「……繋ぎ止めて」

と、言った。


「貴方のとりこにしてあげて。

婚約者に夢中になり、他の男なんかには見向きもしないように。

得意でしょ?」


「……あれのご機嫌を取れと。

そして、私は身持ちの固い、あれ好みの男になれと?」


「相愛でなくていいのよ」

ミリアは、コソッと声を潜める。


「貴方はいつもの貴方でいいの。

あれを支配して頂戴。

甘い言葉で融けさせて、どんなに貴方が漂っても、自分に帰ってくる、自分しか居ないと思わせてあげて。

貴方が()()の想い人であり続けるよう、手練手管で繋ぎ止めるの。

()()の初恋で最愛。

なれるわよね、ローラン様」


「私は、それで、どんな実入りがある?今のままでも、あいつは結婚するさ。破棄するような娘じゃない」


「地獄に落としたいのよ!」

ミリアの囁き声は、それでも強い。

「政略と割り切って結ばれるのではなく、愛する人と結ばれる。ニセモノの幸福を抱えて、結婚させる。

どんなに失望するでしょう。

愛する人に振り向いて貰えない辛さを泥のような気持ちを抱えて生きていくのよ!

……貴方は、結婚まで、支配して、何もかも奪って捨てればいい……どう?愉しいと思わない?」


コールは、じっと、瞳を輝かせて早口で語る美少女を見入った。


……悪くはない。

確実に、マルグリットを手にするには、悪くない。

レポートの時のように、飴と鞭で思うままにする。言いなりにさせる。


「……私の婚約者が余程お嫌いなんだね」


諾とも否とも言わずに、コールは煽る。


「あら」

ニタリとミリアは嗤って

「大嫌いよ。貴方を独り占めする女はみんな」

「私は、誰のものでもない」

「それでこそ、コール・ローランよ」


ミリアは立ち上がり、

「貴方の人生に、相応の事はさせて頂くわ。ダンブルグの名と、私の未来の位をかけて」


それは重畳……


色男の呟きを背中で捉えて、ミリアは大広間の若者のもとに戻った。



モラハラ……

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