女郎蜘蛛
「君が欲しいなあ」
高嶺の貴方
孤独の貴方
私の手が届かない貴方
賢くて純粋で優しくて
それでいてなんにも知らないのねえ
糸を張って手繰り寄せて
網が穴だらけなのはわざとなの
「嫌だわ、完璧なんてつまらない!」
完璧の上を綱渡り
自分の糸から落ちたりしないわ
一時的永遠の愛を紡ぎましょう
恋飲み干して盲目作り上げて
理由なんて貴方
この満たされない何かを満たしたい
それだけで十分よ
糸を張って手繰り寄せて
そんな事に才能なんているかしら?
私にはなぜだかわかってるのよ
一本のまっすぐな糸の先ぐらいに
穴だらけの網確実の糸
「ここに来たのって貴方の意志でしょう?」
満たされないのよ、ただずっと
いくら永遠を信じても
底がもう覗いてる
まだまだ足りない満たされない!
食い散らかして飲み込んで
「あぁ、本当だったんだけれど」
言葉にした端から嘘に染まっていく
言葉にしなければ伝わらない?
それなら私はどうすれば
糸を張って手繰り寄せて
まださっきのが食べ終わってないけれど
「ここに来たのって貴方の意志でしょう?」
救いの糸がほしいけど
蜘蛛が私じゃ救われないわね
何より言葉にすれば嘘になる
一人にしないで
そう言いながら開ける口
次の貴方なら叱ってくれるかしら
せめて罪悪感ない屑の同類を
願うならこの糸を断ち切って
「君が欲しいなあ」
…あら?なあんだ。まぁもう少しここにいてちょうだい?
「いただきます」
食べ終わるまでは二人きりの愛