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霧雨の天使たち 44

 次の日、一時間目が終わるとあさみの席に美和と美咲がやってきた。

「あさみ、昨日はお疲れさま」

「あぁ、二人もお疲れさま」

 あさみは、顔を上げて美和と美咲を見る。

「ねぇねぇ、あさみちゃん。昨日シゲルさんと帰ったとき、何か進展は無かった?」

 いきなり、あさみの顔がほんのり赤くなった。まさか突ついて何かでてくると思っていなかった美咲は、聞いた側なのにも関わらず驚く。

「えっ、もしかして何かあったの? 何したの?」

「何もしてないって!」

 あさみはブンブンと手を振る。あやしいわね、と美和が唇に手を当てた。焦るあさみを二人が尋問していると、クラスの扉からあさみの名を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、入口に遷が立っている。

「あさみさん、ちょっと話したい事があるから裏庭まで来て欲しいんだけど、いいかな?」

「うん、なに?」

 あさみは尋問から逃れられると喜んで遷のもとに駆けて行った。だが、二人が見逃すはずはなく、裏庭の様子を見る事のできる渡り廊下まで、こっそり後をつけていった。

 裏庭に来た遷は、少しうつむいてから、改めてあさみを見た。

「これ、告白が来るのかしら……」

 美和にしては珍しく興奮している様子だ。美咲も目を輝かせて様子を見ている。

 観察されているとはつゆ知らず、遷が口を開いた。

「俺、シゲルさんに比べると全然子供だし、かっこわるいと思う」

「そんな事無いわよ、かっこいいし、遷くんは遷くんよ。いきなりシゲルの名前なんか出して、どうしたの?」

「俺……」

 少し溜めて、遷がぐっとあさみを見つめた。

「ずっとあさみさんと一緒に居たいんだ」

 決死の思いで遷が言った。しばらくの間があって、あさみは遷に言う。

「うん、私もよ。今も一緒に居るしね! ところで話したい事って何?」

「え?」

 遷は目を点にさせる。頭の中が真っ白になった。渡り廊下では、美和と美咲が全身脱力してずっこけている。

「あ、え、いや。現国の教科書……忘れたから貸して欲しいんだけど」

 泣きそうになりながら遷が言った。あさみは、なんだ、と笑った。

「いいわよ、別に教科書の事くらい教室で言えば良かったのに。じゃあ今から取ってくるね!」

 そう言って、あさみは校舎の中に入っていく。残された遷は、肩をがっくりと落としてその場に突っ伏した。

 その光景を見ていた美和と美咲は、やっとの思いで立ちあがった。

「ねぇ、あさみってあんなに天然だったかしら?」

「今のはダメだよねぇ」

「もし、あれを告白だと分かってやってるとしたら、相当な悪女ね」

 美和が眉間に手を当てたが、美和は首を横に振る。

「たぶん、分かってないと思うよ。あさみちゃん、彼氏欲しいって言ってる割になかなか彼氏が出来ないのって、ここぞの時に気付いてないだけなのかも知れないね」

「あぁ、そうかも知れないわね……遷くん、これから前途多難そうで大変ね」

 苦笑いして美和が言う。

「ねぇ、さっきのアレが告白だったってあさみに教えた方がいいかしら?」

 美咲はうーんと考えたが、イタズラっぽく舌を出した。

「面白いから、黙っておかない? あさみちゃんが誰とくっつくか、私と美和ちゃんの賭けも終わってないからね!」

 その頃、教室に入ったあさみは風邪でもないのに小さくひとつ、クシャミをした。

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