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霧雨の天使たち 40

 車が走り出してから、シゲルは一言も口をきかなかった。車内に流れるラジオの音楽だけが、空回りして車内に響いている。あさみがチラっと横目で見ると、シゲルはぼんやりとした顔で前を見ていた。

「シゲル、どうしたの? さっきからずっと黙ってる」

「ん?」

 前を向いたまま、シゲルが返事をした。

「考えてたんだよ」

「何を考えてたの?」

「まぁ色々」

「何よそれ、言いなさいよ」

「……口調から態度から、顔以外は全てにおいて全然可愛くねーな、お前」

 ニヤニヤしてシゲルはあさみを見た。あさみは頬を膨らませて怒ってシゲルに何か言おうとしたが、先にシゲルの方が喋りはじめる。

「そうだな、例えばりりすの事かな」

 ウインカーを出したついでに、シゲルは頭に手をやった。

「今すぐにでも照子の事を知らせなきゃいけないが、少し躊躇いがある。でも、いつまでも隠せるものじゃないからな。あいつ、また具合を悪くしなけりゃいいが」

 あさみは怒りをすぐに静め、溜め息をついてうなだれた。りりすの事は確かに心配だったが、以前抱き合っていたりりすとシゲルの姿がフラッシュバックする。正直、りりすに対してだけ優しさを見せるシゲルに、少し妬きもちをやいていた。

「そうね。先輩、デリケートで壊れそうだものね」

「今日、りりすの入院している病院に見舞いに行こうと思ってたんだが、一緒に来るか?」

 あさみは一瞬考える。りりすとシゲルが仲睦まじくしている姿を見るのは少々抵抗があったが、事件が終わった今、シゲルとここで別れたらそれが最後になるのだ。寂しい気持ちが込み上げるのを堪えて、あさみは笑った。

「うん、行く!」

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