霧雨の天使たち 30
その頃、美和は屋上で勉と話をしていた。
「あの、兵藤先輩……」
美和が切り出したが、言葉が続かない。もどかしい思いをしながら、美和は足元をずっと見つめていた。
「卯野さんは、僕とりりすと、あの露木っていう人との事……知ってたんだね」
勉は、責めるような事はせず、ただ悲しそうに笑った。
「情けないな。いっそガツンと言って別れちゃえばいいんだろうけど」
勉はそう言って、屋上の手すりに頬杖をついた。心地よい風が吹き、白いシーツがいくつもたなびいている。
「どうしても、りりすの事を嫌いになれないんだよ。騙されても、嫌われても、それでも好きなんだ。少しでもりりすが僕の事を必要としているなら、それでいいんだ」
美和は、脳裏に先日の廊下での遷と那子のやりとりを思い出した。何故か、遷が勉とだぶる。遷も確か、騙されてもいいと言っていた。そんな二人の純粋さが、訳も無くとても悲しいと美和は思った。
「私は、兵藤先輩とりりす先輩、お似合いだと思ってます」
それくらいしか、言葉が出ない。
「ありがとう」
勉が、優しく微笑む。そんな微笑みが、美和には辛かった。
「露木って人、明るくて包容力のありそうな人だったな……」
抜けるような青空を見ながら、勉はぽつりとつぶやいた。




