霧雨の天使たち 18
学校に戻った四人は、残りの授業を受けていつもの生活ペースに戻ってゆく。さきほど様子がおかしかったあさみだったが、りりすの家を出て以来何事も無かったように喋り、笑っている。だが、美和は少しひっかかるものを感じていた。
りりすの部屋で発見したシゲルの写真。あさみの性格からして、そんなものを発見したらすぐに美和達に話をしそうだが、そのような素振りは無かった。美和の方から話を振ってもよかったが、そもそもりりすの部屋にシゲルの写真がある事自体が不自然で、どうも話がこじれそうな嫌な予感がしたので、あえてその事に関しては何も話をしなかった。
当のあさみは、自分でもよく分からない感情の渦を抱えながら、帰宅後に自室でぼんやりしていた。
突然見つけたシゲルの葉書と写真にどうしてここまで動揺しているのか、自分でもよくわからない。一度しか会った事がなく、しかも喧嘩口調で話をしていたというのに。
だが、あさみの中でシゲルは鮮烈な印象を持っている事は確かだ。今まで同級生にちやほやされるだけだったあさみが、初めて年上のからかい対象になったのだ。
何度目かの溜め息をつくと同時に、あさみの部屋の電話が鳴る。美咲からの電話だった。
「あのね、あさみちゃん。気のせいだったらいいんだけど、今日、ちょっと様子が変じゃなかった? 何かあったの? 大丈夫?」
美咲はぼーっとしているように見えたが、しっかりあさみの心の変化には気付いていたようだ。だが、あさみは強気に笑う。
「あはは、そんな事ないわよー、気のせいよ」
「そう? それならいいんだけど……」
その後二人はとりとめもない話をして電話を切った。だが、美咲はどうしても気になり、今度は美和に電話をかけた。最初、美和は言いにくそうだったが、自分が見た事を美咲に話した。
「あのカメラマンのお兄さんの写真が? へぇ、そうだったんだぁ……」
美咲は驚いて受話器を落としそうになった。
「でも、何でりりす先輩の家にそんな物があるんだろうね? 知り合いなのかな? もしかして恋人?」
「でも、りりす先輩ってうちの部の兵藤部長と付き合ってるのよ」
「わっかんないよねぇ。でも、あさみちゃんはそれで様子がおかしかったのかな?」
「ん、一概には言えないけど、そうかもね」
美和は言葉を濁す。
「あさみちゃん、もしかして……」
言いかけて美咲は自分で止めた。
「ううん、何でもないや。じゃあまた明日ね!」
美咲は電話を切った。美和はしばらく受話器を握ったまま考えていたが、首を振ってふぅ、と息を吐き出した。




