霧雨の天使たち 17
しばらくすると、りりすの意識が戻ったが、とても起き上がれるような状態ではなかったので早退する事になった。その場に居た四人は、りりすの付き添いとして、りりす宅まで彼女を連れてゆく事になった。りりすの家は学校近くの高級住宅街の一角にある。りりすを抱えるようにして自宅前にたどり着いた一行は、りりすの家の豪華さに少し驚いた。
玄関を開け、中に入る。スロープのある階段を登ってりりすの部屋に入り、りりすをベットに横たえさせた。
「ごめんなさいね、あなたたちに随分と迷惑をかけてしまったわ」
ベットの中のりりすが、申し訳無さそうに言った。
「そんな事ないですよ、とにかく今日はなるべく何も考えないようにしてゆっくり休んでくださいね」
美咲が、りりすの手にそっと自分の手を重ねて優しく言った。りりすの目にほんのりと涙が浮かぶ。それを隠すように、りりすは瞳をそっと閉じた。
「鞄、机の上に置いておきますね」
あさみは、りりすの鞄を机に置こうとしたが、机の上に一通のハガキが乗っている。それをどけて鞄を置こうとハガキを手にした。覗き見する気はさらさら無かったが、差出人の名前が何となく目に飛び込んでくる。あさみの顔が強張った。差出人の名前は――露木シゲル。
あさみは、見てはいけないと思いつつも、どうしようもない焦燥感を感じ、さりげなく文面を読んでしまった。どうやら北海道から送られてきた手紙らしい。あさみは、ふと喫茶店で嬉しそうにキタキツネの話をしていたある人物の笑顔を思い出した。
震える手を誤魔化しつつ、あさみは鞄を机に置き、目の端で室内にある物をちらちらと見た。
部屋の角に小さな本棚がある。そこには数枚の写真が入る写真立てが飾られており、りりすの写真や、りりすと一緒に映った妹と思しき写真などが入っている。その中の一枚を見て、あさみの心臓がさらに縮み上がった。
そこには、つい一ヶ月ほど前に知り合ったカメラマン、露木シゲルの笑顔が写っていた。
りりすの容態を見ていた三人だったが、美和だけがあさみの微妙な変化に気がついた。不審に思った美和は、青白い顔をしているあさみの見ている方向を見て、同じく驚いた。だが、あさみの驚き方は美和よりももっと動揺している事が気にかかる。だか、ここで追求はできない。もやもやした気分になりながら、美和はゆっくりと立ち上がった。
「さぁ、あまり長居すると邪魔になるから、そろそろおいとましましょうか」
「そうだね。先輩、お大事に」
「お大事に」
美咲と遷が言う。
「……あ、お大事に、りりす先輩」
数秒遅れてあさみが言った。
りりすのお礼を聞いて、四人は家を出た。




