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霧雨の天使たち 9

 翌日、あさみは寝不足の寝ぼけまなこで登校した。先に教室にいた美和が声をかけてくる。

「おはよ、あさみ。どうしたの? いつも以上にボケてるわよ」

「んー、那子の事とか色々考えてたら眠れなくなっちゃってさ」

 あさみは瞼を半開きにしているので、見た目が非常に怖い。少なくとも遷には見せられない顔だ。

「那子? もしかして、昨日那子に会ったの?」

「華道部の隣りの教室で料理部がお菓子作ってたんだけどさ、そこに那子が居たの。もうバッチリ鉢合わせ」

「うわ……」

 美和は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「それだけじゃないんだけどね、りりす先輩の事とか色々考えてたら、随分と夜が遅くなっちゃってさ」

 あくびをかみ殺してあさみが机に鞄を置く。鞄から教科書を取り出して机に入れようとしたその時、美和はあさみが手にしている教科書を見て言った。

「あれ、今日は代数幾何の授業じゃなくて基礎解析だよ」

「え? 今日の二時間目が代機じゃ……」

「それは水曜日の時間割。今日は木曜だから、二時間目は基礎解析よ」

 あさみの顔が青くなった。うっかり時間割を忘れただけだが、よりによって基礎解析の先生は、忘れ物に非常に厳しい人物だ。

「どうしよ……他のクラスの子に借りてこなきゃ。もう予鈴鳴りそうだから、次の休み時間が勝負ね」

 あさみが言うと同時に、予鈴ギリギリ登校の美咲が教室にやってきた。

「おっはよー美和ちゃんあさみちゃん!」

 底抜けに明るい声に、あさみは脱力する。

「おはよ……あぁ、もう、那子のせいで教科書忘れるなんてイライラするわー!」

 あさみは持っていた教科書をバンと机に叩きつけた。

 きょとんと不思議そうな顔をした美咲に見られた美和は、苦笑いして肩をすくめた。

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