[RE.page]No.1 糞女神と異世界転移
新作スタートです
一部修正しました
諸事情で細かい設定が書けなかった工藤淳史の情報を追加しました
「おい、あんた今なんて言った?」
「だから、『ダーリンと喧嘩してたらうっかり君と君のクラスメイト全員ピンポイントで殺しちゃった』の。本当にごめんなさい」
「死因が『他人(神様)の痴話喧嘩に巻き込まれた』って…いろんな意味で酷いな、酷すぎる…」
そう、話をそのまま受けとると神様同士の痴話喧嘩に巻き込まれて僕、東城鶫は死んでしまい今、この内装から家具に至るまで一切合切真っ白なアパートの一部屋の様な場所で自称女神と向かい合っているという訳だ。正直最初はこの女頭大丈夫か…?と自称とはいえ僕達を殺した殺人犯を憐れんでしまった位だ……しかし非常に残念ながら脳裏に焼き付いた記憶と心に響く死という言葉に対しての例え様のない実感、照明で部屋を照らしている筈なのに影の一つも見当たらないという摩訶不思議な光景が目の前の女神(恐らく本物)が話している事が事実であると物語っていた。
時を遡る事約五分前、修学旅行で行き先北海道…伊丹空港への道中のバスの中で事は起こった。
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「お前北海道行ったことあったっていってたよな!」
「そうそう!楽しむポイント教えろ!」
「うーん、そうだな…とりあえず言えるのは…海鮮料理最高!!」
「やっぱそこか!」
「私寒いの嫌なんですけど…」
「だよね~肌荒れそう」
旅行位でしか行けない所だったのでクラスの連中は皆、狭苦しいバスの中なのにテンションが無駄に高かった。
「うっぷ…てめぇらうるせーんだよぉ…口からモザイク案件発生しちまうじゃねぇ━━うっ…」
「喋るな淳史、ゲロ吐いて俺達の記憶に黒歴史刻み込む事になりかねないぞ」
バスが揺れる中で酔い過ぎて歪みに歪んだ実に酷い顔を晒しているのは工藤淳史。普段は結構テンション高い奴だが僕が唯一心を許せる親友だ。自他共に認める戦国武将ヲタクで自室にはかなり本格的な代物が揃っている。その熱意が武術関連にも注がれ結果運動面ではとんでもないスペックになってしまっている。昔からたまにボーッとしている事があり中学二年の時に聞いてみるが本人曰く「親友相手にも秘密の一つや二つはあるもんだ」らしい。とある出来事がきっかけで理由を教えてくれたから今はもう気にしていない……こいつが初めて僕にしてくれた頼み事でもあるしな。
「鶫ってホント毎回ストレートに言うよねぇ…ある意味羨ましいよ。これで不快に思えないのが美男子の特権なんだろうねぇ。鈴鹿が好きになる理由がわかるようでわかんない」
「ち、ちょっと!千穂ちゃん!堂々と言わないでよ恥ずかしい……!」
僕の事を下の名前で呼んだのは桜庭千穂。少しおっとりとした口調で性格も基本温厚だが腕力だけなら淳史以上で昔しつこくナンパしてきた男を問答無用で殴り倒したりしている。謎の発言力があり妙にミステリアスなところが人気なクラスのまとめ役だ。
そしてその隣で肩をおとしている奴が瑞希鈴鹿。気弱な奴だがこいつも運動神経はかなり良い。ただ成績が伸び悩んでいる事実がネガティブ思考を更に加速させている。その割にはちゃんとわからない部分の解き方を僕や桜庭によく聞いてくるチグハグな奴だ。そして僕に好意を持っていて一度告白してきた事がある。その時僕は「瑞希、お前の事を僕はよく知らない、だから今は無理だ。それでも諦めきれない程僕の事が好きなら僕と親しくなってから出直してこい。その時僕の心がお前に動いていたら付き合おう」と答えた。上から目線な台詞なのは理解しているが淳史以外の奴にはどうやっても素直になれない。それから瑞希と一緒に彼女の親友の桜庭に淳史を加えた四人でよく喋ったりしている。
「既に一度告白してきただろうが…恥ずかしがる理由が何処にある。そんなことでは今の関係のまま高校生活が終わるぞ、僕と親しくなりたいと思うならこれ位で恥ずかしがるな」
「はうぅ……」
「さすがストレート鶫色んな意味で尊敬するわぁ…」
「僕を芸能人みたいに言うな━━━って何だ…この音………」
ここで轟音が響き話は途切れ、今に至る。
「僕の最後の発言微妙過ぎる上にまだ一七だぞ、どうしてくれる…!!」
「君の居た世界では事故死って事になってるんだけど、流石に死者を蘇生する事は神王様が定めたルール上できないのよ」
「やろうと思えばできるのかよ…」
「だけど君の居た世界とは別のとある世界でなら君のまま、生き続ける事ができる」
君のまま生き続ける事ができる…?妙な言い方だな…まぁわざわざ聞く程の事ではないと思うが……
「僕に別の世界に行けと?」
「今の君のままなら危険しかないわね。でも私の言った異世界に行けば君の居た世界にはない力を身につけて生きられる。その世界は君の世界で言うところのRPGゲームみたいなシステムが存在する世界だから武器やスキルを使って魔物とか倒したりして経験を積んでいけば強くなれるわ。あ、魔法もスキルの中にしっかりあるわよ」
「おいおい……本当にどこぞの異世界小説臭い話になってきたな…」
「臭いっていうか丸々その通りだけどぉ☆…あ、いつものテンションになりかけて━━━━━━━!?こほんっ!…殺してしまったお詫びとして私からスキルであってスキルではない君だけの特別な力をあげるわ。私もどんな力になるか分からないしどういう力かは君次第だけど基本的に強力なモノしかないから安心していいわよ」
「スキルであってスキルではない?矛盾している上に不安要素多いな…それに━━━━」
「それじゃあいってらっしゃーい」
「……はっ?っおい!ちょっと待て!!まだ肝心な事が━━━」
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「…霧が厄介だな。糞女神め…せめてもう少しまともな場所に……」
僕は今深い霧が広がる森の中で途方に暮れている。怪しい糞女神のお陰で異世界転移直後にサバイバル生活をする羽目になった。昔淳史に少し道に迷った程度で「鶫、お前はまず道をしっかり記憶しろ!その内行方不明になりそうで怖いわっ!!」…と随分大袈裟に言われてしまった。僕は記憶力は良い方だぞ淳史。まぁ昔の事を思い出すのはこれ位にして━━━━━━
「とりあえず糞女神に貰った力を確認したいんだが…どうすればいいんだ?」
お先真っ暗である……許すまじ!糞女神っ!!
つづく
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