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妹が好きなら妹以外を想っちゃだめですか?  作者: しりうす
If I'm pretty, would you love me even I'm not your sister?
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四十五話

 それから、利用者が増えてきた時に二人は建物を出た。

 日はだいぶ傾き、あと一時間もしないうちに空は黒く染まるだろう。


 暗くなるまでまだ時間はあるが、充足感に満たされた二人は、その足で帰ることにした。待ち合わせた駅で電車に乗るために、今はその駅へ向かって歩いているところ。


「改めて、今日は楽しかったのです。ありがとうなのですよ」

「俺も楽しかったです。さつき先輩さえよければまた出かけましょう」

「その時は二人でなのです?皆でなのです?」

「俺はどっちでもいいですけど……」

「あたしは、悠くんと二人っきりがいいのです」

「っ……」

「だって、悠くんといて飽きないのです。それに二人っきりなら悠くんが何でもやってくれそうだと思うのですよ」

「つまり女王様になりたいから二人がいいと、そういうことですか」

「なのです」


 笑顔でそういうさつきには、反論する気概すらそがれてしまう。彼女になら尽くしてもいいと、そう思えてしまう。


「そうだ。悠くん、これはデートなのです?」

「一応俺はそう思ってます。それにさつき先輩もさっきデートって言ってましたよね?」

「そうなのです。年頃の男女が仲睦まじく共に過ごす。これがあたしの中の〝デート〟なのです」

「なるほど。仲睦まじくってところには今の俺たちが当てはまるかわからないですけど、その定義には共感できます」

「えっ、悠くんって未だにあたしとの間に距離あるのです?あたしにとっては仲睦まじいと言ってもいいと思うのですけど」

「……仲が悪くないし、一緒にいて楽しいので、仲睦まじいってことにしましょう」

「うんうん。そしてもう一つ、あたしの中の〝デート〟の定義があるのです」

「……」


 なんとなく察せてしまった。というか、普通デートとはこっちを指すだろう。


「あたしの中の〝デート〟定義その2。それは──恋人同士のお出かけ、なのですよ」

「ですよねー」


 デートと言われて真っ先に思い浮かぶ定義だ。


「これには悠くんも納得の様子なのです」

「まぁ、デートですから」

「じゃあ悠くんにとって、カップルって何すると思うです?」

「なにをするか……?」


 恋人ですること、と言われて思いつくのは、ハグやキス、所謂ABCと言われるものだろう。あとは告白とかプロポーズあたり。


「あたしはなによりもまず、これだと思うのです」


 言うが早いか、さつきは悠の手に自分の手を重ねた。そのまま指を絡ませ、恋人つなぎに。さつきのほっそりとした指のすべすべした感触や柔らかさがダイレクトに伝わってくる。

 悠より一回り小さい彼女の手は、簡単に折れそうなほどに繊細で、ひんやりとしていた。


「恋人にしたいことって、自分がしてほしい事でもあると思うのです。悠くんにとってこれは、正解に入るです?」


 正解かどうか?そんなの、大正解に決まっている。

 ハグもキスもその先も、男女交際という点で避ける人は少ないだろう。それは相手をもっと知りたいだとか、近くに感じていたいだとか、理由は様々だろう。

 でもその一歩目は、手を繋ぐことから。そしてそれは、ハグよりもキスよりも相手を感じ、安心できる。


「悠くん?」

「相手にすることは自分もしてほしい事、なんですよね?」

「そう、なのです……」


 繋げられた手を、優しく握り返す。さつきが悠にしたように、悠もさつきに。

 目をぱちくりと開き驚いた様子を見せたさつきだが、次の瞬間には嬉しそうに微笑んだ。その微笑みはさっき見た以上に悠の視線を吸い込み離さない。


「水族館のときも手を繋いだけど、今の方がいいのです」

「わかります。あの時は気恥ずかしさとかあったけど、今はそんなの全くないです」


 水族館、と言われて目的を思い出した。けれど今はそんな目的なんかどうでもよくなっていた。

 手を繋ぐという目的は達成したから、もう一度繋ぐ必要はないのだが、ゴールを見据えた時にここでつながないという選択肢はありえないだろう。


 だって、あの時と今では全く気持ちが違う。それは恐らく悠だけでなく、さつきも。

 手を繋いでいるから、二人の距離はそんなに離れていない。歩くだけで肩がぶつかりそうになる。


 目の前に駅が見えてきた。同じ電車に乗るとはいえ、別れの時は近い。


「もう、終わっちゃうのです」


 寂しそうにそういうさつきは、その感情が声にも映っていた。

 それを聞いた悠は、軽く手を握ってから、


「さっきも言いましたけど、また出かけましょう。次も二人で」


 そう伝えた。今度は二人でもみんなでもいいなんて言わない。さつきの表情を見て、そんなことを言えるわけがない。

 その言葉を聞いたさつきはというと、一瞬だけ悠の瞳を見つめ、


「はいっ!」


 嬉しそうに笑った。今日三度目の見惚れる笑顔。この魅力的すぎる笑顔には、どれだけの時間が経ったとしても、呆けてしまうこと必至だろう。

おまけ


「因みに悠くん」

「なんですか?」

「悠くんは女の子と手を繋いだことあるのです?」

「もしないって言ったら?」

「からかうのです」

「あるって言ったら?」

「問い詰めるのです」

「どっち選んでも地獄。だと……?」

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