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妹が好きなら妹以外を想っちゃだめですか?  作者: しりうす
If I'm pretty, would you love me even I'm not your sister?
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三十九話

 数日後。今日は水族館に行く日だ。

 牡丹から軍資金として多少のお小遣いをもらった悠は、待ち合わせ場所である駅前のモニュメントの前にいた。立体的で複雑な形をしたそのモニュメントは、駅前唯一の待ち合わせスポットになっていて、悠以外にも誰かを待っている人がいた。


 待ち合わせは水族館近くの駅前。時間は10時だ。現時刻は9時50分。

 あと10分あるので、悠は今日の作戦を思い返すことにした。と言っても、ほとんどがアドリブになるので、作戦らしい作戦はないのだが。


「お、お待たせ、なのです……」


 いくつかのシミュレーションを終えた頃、待ち合わせ場所にさつきが現れた。

 袖にフリルがついた白いシャツに、ブラウンのオーバーオールを合わせ、周りから顔を見られないようにするためか、深めにハンチング帽をかぶっている。


「ん、おはようございます。その服似合ってますね」

「あ、ありがとうなのです」


 今日の服装を褒めると、さつきは恥ずかしそうに顔を逸らした。

 牡丹からの指示その1だ。とにかく服を褒めること。

 だが実際似合っているのだから嘘は言っていない。というか牡丹に言われなくても自然と口にしていた自信がある。それほど今日のさつきは可愛らしかった。


「牡丹はまだなのです?」

「先に行っててくれって言われたから一緒じゃないんですよ」

「うーん、あと5分あるし待つのです」


 予定ではもうそろそろ牡丹の方から連絡が来る時間である。

 そんなことを考えていると、丁度悠の携帯が震えた。牡丹だ。


「あー」

「どうしたのです?」


 スマホを見た悠の反応が気になったのか、さつきが下から悠を覗き込む。


「なんか急用ができて今日来れなくなったって」

「ええっ!ドタキャンってやつなのです!?」

「ドタキャンってやつなのです」


 悠が事前に来ないことを知っていたので、ドタキャンというには意味が違うような気もするが。


「どうします?」

「どうするのです?」


 いやそれを聞いているのだが。なんていうのは思うだけにとどめる。先輩であり大女優であるさつきに文句を言えるほど悠は肝が据わってない。

 逆に考えると、さつきは悠の意見に従うつもりがあるということだろう。これは牡丹の計画上とても都合がいい。


「……なんならこのまま水族館行きます?」

「行くのです!」


 なんという食いつき。よほど水族館に行きたかったのだろう。


「じゃあ行きますか。こっち……みたいですね」


 スマホの地図を見ながら、先導して歩く。牡丹から教えられたポイントの一つ。頼りになるところを見せるのだ。

 すたすた歩く悠に、しっかりとついていくさつき。その姿を見て、悠は歩く速度を遅めた。身長差がある分、悠の方が早く歩いてしまい、さつきが余計に疲れてしまうからだ。それなら時間に余裕があるのだし、さつきの歩幅に合わせて一緒に歩いたほうがいい。


「本当に今日は楽しみにしてたのですよ」


 にこにこ笑顔でさつきは言った。嘘偽りのない本音なのだろう。だから、ちょっと不満も漏れてしまう。


「牡丹には週明け会ったらぐちぐち言ってやるのですよ」


 ドタキャンされたのを相当根に持っているらしい。普通に考えて、前々から約束していたのに、当日急用ができたからって約束がなかったことになれば怒って当然だろう。しかもそれが楽しみにしていたとしたらなおさら。


「LINKだけじゃ足りないのです……!」


 なにやら相当な意気込みだ。南無。


「っと、ここですね」


 さつきの牡丹への愚痴や、今日がどれほど楽しみだったかの話などを聞きながら、相槌を打ったりなんかもして。たった数分の移動時間であるが、それが数舜に感じるほどには楽しかった。


 目の前には大きな建物。今日の目的地である、都内有数の水族館だ。休日ということもあり、家族連れやカップルなどがたくさんいる。


「子供料金、大人料金、高校生、シニア……あ、カップルなんてのもあるのです」


 受付の上に表示されている料金表には、いくつかの種類の料金が載っていた。カップル割、なんてのもあるらしい。


「高校生料金でいいんじゃないですか?」

「それが、学生証を忘れてしまったのです。なので大人料金にするのです」


 実は悠も学生証を持ってきていない。さつきはたまたまらしいが、悠の故意だ。牡丹の計らいでもある。

 そしてそれは偏にとある目的のため。それこそ──


「ちょっと今月ピンチなんですよね……」

「そうなのです?なら悠君の分も払ってあげるのです」

「それはダメですよさつき先輩。自分の分は自分で払います」

「でもピンチなのですよね?」


 大女優であるさつきは、控えめに言ってもお金持ちだ。少なくとも、同じ高校生である悠やさつき、芽衣よりはお金を持っているだろう。

 でもだめなのだ。だって、目的は奢ってもらうことじゃないから。


「あの、さつき先輩」

「ん?どうしたのです?」


 うんうん唸って考えているさつきに、声をかける。とある提案をするためだ。本当はさつきから言ってほしかったが、この調子だと恐らくこの発想は出てきにくい。


「さつき先輩さえよければ、なんですけど」

「ふむふむ」

「カップル料金、じゃ、だめですか?」

「カップル料金……?」


 悠を見ていた瞳が、料金表に向かう。そこには、カップルとかかれた枠と、その横に値段が書かれていた。


「あ、その手があったのです!それでいくのです!」


 さつきは二つ返事で了承した。牡丹の狙いとしては、多少ドギマギしてもらうのが理想だったのだが、どうやらその狙いは外れたようだ。普通に天啓を受けたかのような衝撃を伴って、嬉々としてさつきが受付に並んでしまった。

 因みに、カップル料金は安い。高校生料金と同じくらいだ。


 受付でとくにカップルであることを証明しろとは言われなかったので、何も問題なくチケットを買えた。

 手を繋げだったりハグしろだったり、そういう要求があった方がさつきをドキドキさせられたのではないかと思うが、そういう経験で言えば悠も少ない。いや全くない。逆にどきどきさせられそうなので、そこのとは口にしなかった。


おまけ


「さつき先輩が怒っても怖くなさそうですよね」

「そうなのですよ。牡丹には何回か怒ってる姿を見られたことがあるけど、毎回頭を撫でられて終わるのです」

「可愛らしいんでしょうね」

「なので怖い笑顔の練習でもしようかと思ってるのです。……こんな感じに」

「……あの」

「なんですか悠くん。怖いですか」

「……いえ、その。迫力に欠けるというか……可愛いです」

「……」

「……」

「……泣いていいです?」

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