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妹が好きなら妹以外を想っちゃだめですか?  作者: しりうす
If I'm pretty, would you love me even I'm not your sister?
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二十八話

 少し時間が経ち、日付は五月に突入していた。つまり今はゴールデンウィークである。


「ついに明日だぞ……」

「あ、うん」

「興味ないのは仕方ないけど、もう少し興味持ってくれてもよくないかな息子よ」

「いやだって正直どうでもいいし……」

「僕にとってはそうじゃないんだよ!?」


 悠と廉人がいるのは、悠の部屋である。水族館へ行く日を翌日に控え、明日のために早めに寝ようとしていた悠のところへ、どこソワソワした様子の廉人が現れたのだ。


 曰く、これは家族になってからの初めてのお出かけという体を取ったイベントだかららしい。

 実は、悠達と牡丹達が一緒に住み始めてからまだ一度も家族全員でどこかへ出かけたことはない。それだけでなく、廉人はあまり牡丹と彩芽と話しておらず、どこかよそよそしい雰囲気があるのだ。


 それを取り除くために、今回のお出かけを計画したらしい。

 因みに、提案した時はもし今のような状況であったらこれを機に仲良くし、お出かけする前にすでに仲良くなっていたらただの楽しいお出かけにするつもりだったようだ。


「そもそも、父さんの心配し過ぎなんじゃないか? 牡丹も彩芽も父さんのこと嫌ってはいないと思うけど」

「嫌ってなかったとしても仲良くなかったら意味ないんだよ!」

「二人くらいの歳の娘を持つ父親は娘とそんなに仲よくしようとは思わないと思う」

「僕は特別なんだ!」

「イタいイタい」


 自分は特別だという父。悠はそんな父にイタさを感じえない。


「だいたいね、僕は普通の家庭と違って再婚してできた娘なんだ。一般の父親が年頃の娘と仲良くしようと思わなかろうが、今の僕にとっては関係ないんだよ」


 廉人と普通の父親とでは、娘と接してきた年数が違う。まだ会ってから一年どころか半年も経ってない廉人が、新しくできた娘と仲良くなろうとするのは当然と言える。


「彩芽はどうか知らないけど、牡丹は普通に仲良くしてくれると思うぞ」

「そうかな?」

「うん。俺が保証しよう」


 廉人と同じ時に初対面したとはいえ、それから接してきた時間は圧倒的に悠の方が上だ。それを理解している廉人は、悠の言葉を信じることにした。


 いくらここで四の五の言ったとしても、それは未来に何の影響も与えない。今から先を思い悩んでうじうじするより、悠の言葉を信じて明日に向けて備えるのが得策だろう。


「じゃあ僕はそろそろ寝るね」

「おやすみ。義母さんはもう寝てるの?」

「いや多分起きてるんじゃないかな」

「ふ~ん」

「何? その目は」

「別に?」

「言っとくけど、何もやましいことはないからね」

「父さんはその気でも相手がどうなのかはわからないぞ」

「ははは、まさかね。そんなことないよ」

「明日寝不足にならないくらいにしときなよ」

「……うん」


 廉人は悠の部屋を出ていった。若干疲れたような顔をしていたように見えたのは気のせいだろうか。


 そして時は少し戻り、悠と廉人が話している時。牡丹は彩芽と一緒にいた。二人ともパジャマを着ている。

 部屋の主である彩芽がベッドの縁に座り、ラグが引かれた床の上に牡丹が座っている構図だ。


「ついに明日ね」

「うん。楽しみ」

「彩芽は昔から、何かあるたびに私を呼び出してたわよね」

「そうだっけ?」

「そうよ。幼稚園の頃は遠足の前日に、眠れないからって一緒にいてなんて言ってきたわね」

「うぅ……恥ずかしい」

「小学生の頃なんて、林間学校お姉ちゃんと一緒にいれないから行きたくない、なんて言ってたのよ?」

「……それは記憶ある」


 牡丹に言われ、当時のことを思い出したのか彩芽は頬を赤くしてクッションに顔を埋めた。


「でも、お姉ちゃんは全部に答えてくれた」

「そりゃあ可愛い妹の頼みだもの。答えてあげなくちゃじゃない?」

「ん、嬉しかった」

「そう。よかったわ」


 彩芽に嬉しかったと言われ、無意識のうちに頬が緩む牡丹。

 彩芽は半分ほど顔を埋めたまま、牡丹に目を合わせず話し続ける。


「今日呼んだものもね、それなの」

「そうなの?」

「うん」

「じゃあ、一緒に寝ましょうか」

「うん」


 過去の経験から、牡丹はなぜ呼ばれたのか大体察していた。だから今パジャマを着ているのだ。

 縁に腰掛けていた彩芽はベッドの上に移り、今度は牡丹が縁に座る。寝るとは言ったものの、すぐに寝るわけではないようだ。


「今頃お母さんたち何してるんだろ」

「うーん。もう寝てるんじゃないかしら?」

「お母さんが?」

「……なさそうね」


 クスッと二人で目を合わせて笑う。菫の性格を考えて、今この時間で既にねていることは考えにくいのだ。


「お母さん何か大きなことがある前って興奮して寝れないもんね」

「そうね。まるで遠足前の小学生……蛙の子は蛙、ということなのね」

「お姉ちゃん?」

「ふふ、冗談よ」

「むぅ~」


 可愛く頬をぷくーっ!させている妹に、牡丹は慈愛に満ちた瞳を向け、そっと彼女の頭を撫でる。されている彩芽は気持ちよさそうに目を閉じ、頭に触れている心地よい感覚に身を委ねていた。


 今この空間には、仲睦まじい二人の姉妹しかおらず、二人だけの空間を構築していた。その仲良しさは、ラブラブなカップルの如くであり、何者にも邪魔することができない絶対領域が顕現していた。


「さて、そろそろ寝ましょうか」

「……あの、さ。お姉ちゃん」

「どうしたの?」


 目線を下に向け、チラチラと目を上に動かして牡丹を見る彩芽。そんな妹の姿に何かを察したのか、牡丹は一つ頷き、彩芽よりも先に布団に入った。


「さ、彩芽。おいで」


 掛け布団を腕で押し上げ、もう片方の手でポンポンと、ベッドをたたく。その意図を察した彩芽は、素直に姉が示す場所へと体を差し入れた。

 バサァと布団が掛けられる感覚。次いで彩芽のお腹あたりに牡丹の手が置かれた。


「お姉ちゃん?」

「嫌かしら?」

「ううん、嬉しい」


 へにゃっと表情を崩し、幸せオーラ全開の彩芽は、牡丹に抱き着いた。


「少しの間、こうしてても、いい?」

「もちろんよ。いつまででも」

「んふふ」


 それから少しして。牡丹の胸には気持ちよさそうに寝息を立てる彩芽の姿があった。


おまけ

「彩芽、可愛いわね」

「んふふ、ありがと、お姉ちゃん」

「小さくて手に収まるサイズで、とても可愛いわ」

「お姉ちゃん?」

「私はほら、手では収まらないし」

「喧嘩売ってるの?買うよ?」



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