僕と彼女の物語
高校入学初日から一ヶ月くらいたった時のことだ。
僕がいつも通り帰宅している途中にたい焼き屋で見かけた事のある顔が合ったので見てみると、美星だった。
彼女は、……チェーンソーを持ってたい焼き屋を脅していた……
僕は慌ててたい焼き屋に駆け込み何があったが事情聴取をしてみる。
「テレビで、凶器とかでこうやって物を無料で貰ってたから。」
「は?」
「だから、テレビで……」
「いや聞こえてるから。そうじゃなくて、えーと、罪悪感とか無かった?」
「?」
彼女は首をかしげて、不思議そうな顔をした。
まるで、僕の言っている意味がわからないというように。
とりあえず、僕はたい焼き屋の店主を見ると今にも泣きそうな顔をしていた。
………気の毒に。
僕はとっても良い笑顔で、
「それでは、僕は失礼します。美星さんまた明日。」
僕は、走って立ち去った………が、なんと店主が追いかけてくる。
しかも、意外と足早い。
「あの、はぁはぁ、なんで追いかけ来るんですか!?」
「自分だけ逃げようとするな!同じ高校なんだろ!頼むからあの子を持ち帰ってくれ!」
「はぁはぁ、嫌だーー!!関わりたくない!はぁはぁ」
なんで、あのおっさん息切れしてないんだよ!
しかもめっちゃ早い。
「私の為に喧嘩しないで」
そして、何故か美星まで追いかけてくる。
「お前は、黙ってろ!はぁはぁ」
僕は全力で走った。一分くらい。
気付くと、僕と美星の二人で全力疾走していた。
たい焼き屋の店主の姿はもう無い………くっそはめられた。
覚えてろよ。あのおっさん、顔覚えたからな。
「ねぇ、帰ろ。」
美星が、話しかけてきた。
「帰るって、どこへ?」
「何を言っているの家だよ」
「は?」
「あなたって、本当にバカね」
いやいやまて、さっきチェーンソーでたい焼き屋を脅していた奴に言われたくないんだが。
「家って、お前のか?」
「違うわ。あなたの家よ」
「は?ちょっと待てお前の家は?」
「無いわ。」
は?無いってどういうことだ?
「追い出されたの。問題をちょっと起こして」
質問する前に答えが、かえってきた。
「いつ、追い出されたの?」
「今日、帰った後に。」
「何で?」
「チェーンソー。」
「なるほど、察した。」
「で、これからどうするつもり?」
「とりあえず住むとこ確保。」
「そういえば、僕が住んでいるアパートに空きがあったよ」
大家さんが、いつも入居者募集っていってたからな。
「お金は?」
「お母さんに貰う。」
「そういえば、あなたの名前教えて。」
「同じクラスなんだから、名前覚えてよ。お願いだから。」
悲しいだろ。名前覚えて貰えてないとか。
「私は、長谷川美星」
「無視かよ、まぁいいや僕は、佐藤裕太改めてよろしくお願いします。」
「地味な名前ね。」
いきなり悪口言われたくないんだか。
「こちらこそよろしく。」
満点の笑顔で、こう言ってきた。
僕は、美星のこの笑顔が好きになった。
………これが、僕と美星の出会いの物語である。




