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意味が分かると怖い話

考える人

作者: 蒼原凉

ただの怠惰な男子高校生修治。これは、そんな彼のある一日の物語。


※この作品には謎解き要素が含まれます

「おーい、起きろ修治」

 姉貴のうるさい声で俺は目を覚ました。ったく、俺だって目覚ましかけてんだからわざわざ早い時間に起こさなくてもいいだろうにさ。

「さっさと着替えな。朝ごはんにするよ」

「はいはい」

 適当に返しながら俺は制服に着替える。机の上に散乱していた今日提出のやりかけのプリントを鞄に無造作に突っ込んで、俺はリビングへと向かった。

「まだ7:00だぞ」

「社会人なったから私は朝早いのよ。2回に分けて朝食作るのも大変でしょ、お母さん」

「ったく、わかったよ」

 そう言って野菜ジュースを口に含む。今年就職した姉貴はリクルートスーツに身を包み、トーストを口紅につかないように気をつけながら食べていた。

「そんなに気をつけるなら化粧しなきゃいいのに。大学までしてなかったろうが」

「社会人ともなると大変なの。ほら修治も急ぐ」

「さては男でもできたな?」

「バカなこと言ってないで食べなさい。冷める前に」

 姉貴はそういうが俺は知っている。姉貴は大学の終わり近くに彼氏ができて化粧をするようになった。それまで男っ気なんて全くなかったのにさ。にしてもあれかね。もう処女は卒業したのかね。まあ、付き合って長いみたいだしさ。俺も彼女とそんなことしてみたいもんだぜ。彼女いないけどな。

「2人とも朝食の時くらい静かにしなさい」

 新聞を読んだまま親父が言う。でも知ってるぜ、4コマ漫画しか読んでないんだ。開いた枚数見たらわかる。それに夜遅くまで仕事で俺たちになんて興味大してないくせに。まあ、面倒だから反抗なんてしないがな。

「まあ、仲よくていいじゃない」

 そして何もよくわかってないお袋。俺が夜な夜な喧嘩を繰り広げてても気づきもしないんだろうな。してないけど。

「それじゃあ行ってきます。修治も遅刻しないようにね」

 へいへい、これでも高校2年間無遅刻無欠席なんだぜ。

 弁当を鞄に突っ込んで肩に引っ掛けて家を出る。駅前で待ち合わせだ。彼女じゃないけどさ。むさ苦しい男3人仲良く登校だぜ。

 すぐに来た1人と一緒にゲームをしながら待つ。ああくそ、出たのただのレアじゃねーか。

「ごめーん遅れた。待った?」

「うん今来たとこ、ってアホか!」

 やって来た親友の龍之介にノリツッコミ。こいつ大抵待ち合わせに遅れてくるんだよな。まあ、時間に余裕はあるけどさ。

「でも修治ゲームしてたじゃん」

「そうだけどさ」

 もう1人の親友の源平が言う。

「だから修治は彼女できないんだよ。ゲームして待たれてたら彼女怒るよ」

「うるせいリア充やろうが!」

 軽く源平の頭をチョップする。

「ところでさ、1限目の数学って宿題やった? 俺まだなんだけど」

「まじで?! 俺もやってねえ!」

 龍之介が宿題の話を持ち出す。

「英語のプリントだけだと思ってた」

「はあ、一応写してもいいけど返してよ。それから美術の宿題もあったからね」

 まじかよ。しゃーない、そっちはバックレよう。それにしても感謝するぜ、リア充やろう!

 無駄口叩きながら電車に乗り、高校に向かう。進学校とかでもないごく普通の県立高校。家から電車で5駅ってくらいか、メリットは。

「くそ、ノーマルってどういうことだよ」

 ゲームに毒づく。おい今日呪われてるんじゃないのか。もう駅着いちまうし。

 駅から歩くこと約10分、流石に歩きスマホはしない。学校に着いたら速攻で英語と数学写し始めだ。頼む、間に合ってくれ。

 結局1限目の数学には間に合わなかった。まじで量多いって。廊下に立たされるなんてことはないんだけどさ。でも微分法とかまじ眠いわ。睡魔襲ってくるし。よし、寝よう。おやすみ。

 そして2限目、世界史。昨日夜更かししたせいで結構眠いんだよな。ナポレオンが追放されたのがコルシカ島だっけ、セントヘレナ島だっけ? まあいいや、忘れた。テスト前に源平のノート借りよう。そして寝よう。おやすみ。

 3限目、原国。内容は今日より太宰治の人間失格。太宰の遺書代わりとか言われてるけどこんな面倒な遺書残すなよ。俺だったらもっと簡潔にするね。書かないけどさ。それに三葉ってなんだよ。写真の枚数なの、それとも回数をそう数えんの? 授業聞いてないからわからないんだけどさ。一応ノートは取ったけど意味わかんねーぞ。

 そして4限目、英語。とりあえず腹減った。あ、宿題は間に合ったよ。姉貴の口癖がとりあえず英語だけは真面目にやれだから寝ずにノート取るけどさ、仮定法過去完了って何よ。とりあえず2段階過去にすればいいのか? そうするよ? これでいいのね?

 昼休みになって、朝の3人組で机を囲んで弁当を食べる。昼はスマホ使えるからな、ゲームしようぜ。そう思ってたら委員長こと柚月がやってきた。

「源平、それからついでに修治、いいかげん進路希望表出しなさい! もうあんた達だけだよ、出してないの」

 あー、進路ね。そういやそんなのあったな。にしても俺はついでかね。

「進路希望表ね。そんなものになんの意味があるのかな。それがどうなろうと僕は僕の行きたいところを受けるのに、それをどうして指図されないといけないのかな。全く、日本の社会はレールに乗っていくようなもんだよ。その電車がどこに繋がってくかも知らないのにさ」

「屁理屈はいいからさっさと出しなさい」

 源平の台詞に柚月が言う。まあ、確かに屁理屈だよな。俺からすりゃ意味不明だし。でも源平の真意は知ってるぜ。彼女と同じところに行きたいんだろ。こいつの学力なら国公立にも行けるはずなのにご苦労なこった。

「頷いてないで修治も出す。はい」

「わかったよ」

 そう言って俺は白紙のプリントを鞄の中から取り出す。あ、グシャグシャになってらあ。

「何これ! 白紙じゃないの」

「俺の学力で行けそうなとこ教えてくれよ。そしたら適当に書くからさ」

 別にどこの大学でも俺構わないし。親もなんも言わないだろうし。というか何も言ってないし。

「これ見てさっさと書きなさいよ!」

 そう言って柚月はなんか分厚そうな本を取り出して広げた。えーと、俺の偏差値はこの辺だから適当にこことこことここでも書いとくか。

「源平も書けたわね。それじゃあ持ってくから」

「委員長も大変だな」

 龍之介が呟く。まあ、あいつの場合それを嬉々としてやってるようにも見えるが。そんなことを考えながら俺は弁当を書き込んだ。おし、Sレア来た。

 56限は連続で美術だ。宿題は出さないことにした。俺、絵下手だし。今日の課題はなんかの彫刻のデッサンらしい。隣に座った龍之介と源平と駄弁る。

「この彫刻、考える人はオーギュスト・ロダンの代表的な作品として有名ですが、元々は……」

 教師がいろいろ言ってるけど無視だ無視。テスト前に源平にでも教えて貰えばいいし。それより俺はなんとかこの考える人を上手く書かないと。

「うわ、修治それただ座ってるだけじゃん」

「おめーこそ考える人じゃなく考える豚だろうが」

 龍之介だって似たようなもんだろ。顔がぶくぶぐ膨れ上がってらあ。

「はいはい、君たちその辺にね。修治君はもう少し体を倒してみるといいかな。もうちょっと動きが欲しいね。龍之介君は全体のバランスを考えて。顔から書いたでしょ」

「あ、はい」

「だったら下から書いてみるといいよ。多分その方がバランス取りやすいからさ」

 やべ、教師にサボってるのバレた。まあ、手は動かしてたけどさ。

「さあ、みんなみてください。源平君の見事な考える人ですよ」

 そう言って教師は源平のスケッチブックを掲げた。うわ、確かにうめーや。俺とは大違いだな。なんでこいつはこんなに完璧なんだろうね。

「それじゃあもう少し時間ありますので頑張ってくださいね」

 そう言い残して教師は去っていく。まあ、いいや。このままで。

「それよりどうする? 放課後、どっか行こうぜ」

 2人を誘う。

「悪いけど僕は行けないよ」

「チッ、またデートかよ」

「悪いね、放課後くらいしか会えないんだ」

「で、リア充やろうは置いといて龍之介はどうする? ゲーセンでも行くか」

「いいぜ、行こうか」

 まあ、源平は宿題見せてもらったりなんなりで役に立ってるしな。からかう程度にしとくか。それじゃあ帰りにゲーセンによりますかね。そうこうしてるうちに授業も終わったしね。

 ショートホームルームも聞き流してさっさと鞄を持つ。今週は掃除当番じゃないしな。

俺たちが普段行くゲーセンは駅前にある。あそこ、メダルゲームがあるんだよな。金あんまり使わずに遊べるし、だいぶやり込んだしな。

「ああくそ、またレアだ」

「Uレアとか夢だよね」

 座った電車の車内で呟く。Uレア目標なんだけどな。物欲センサー働いてるとか?

 ともかく俺たちは駅前のゲーセンに吸い込まれていった。メダルゲームは無心になれるしな。

気がついたらもう18:00を回っていた。ここまで好調だったからなあ。300円しか使ってないけど、こんなに時間使うのか。ちょうど俺も龍之介もメダルなくなったっぽいし帰るか。

「それじゃあ、またな」

「また明日」

 ゲーセンを出て家に帰る。姉貴はまだ帰って来てなかった。彼氏のとこかな。

「あ、修治お帰り」

「ただいま」

 家に帰って鞄を投げ出す。あれ、宿題って何出てたっけ。まあ、いいか。明日の朝にでも源平のを写そう。それより今はゲームだゲーム。

「今日はお姉ちゃんもお父さんも遅くなるらしいから先に晩御飯にするわよー」

 と思いきやお袋に呼ばれた。ったく、姉貴は男のとこにでも泊まるのかね。ああ、俺も彼女欲しいぜ。切実に。

「わかったって」

 晩飯のメニューは八宝菜だった。もっと肉肉しいもの食いたいぜ。

 龍之介と源平とチャットして風呂入って部屋にこもる。さてさて、ゲームしようかね。

 ベットに寝転がってゲームを立ち上げる。さて、Uレア出ますかね。さっそく1回目はSSレアだった。惜しい。でもなかなか幸先がいいぞ。その後もなんども何度も繰り返す。ノーマルとかレアは合成行きだな。そしてついに23回目、いや25回目だったかな? ともかくそんなくらいに、ついに出ましたUレア。

「よっしゃー! 出たー!」

 ついに出ました。苦節3年というのは嘘だけど、それくらいかかった気がするぜ。まあでも俺は無課金でやってるから別にそこまで思い入れがあるわけじゃあないんだけどな。それでもやっぱり嬉しいぜ。

「うるさいよ修治! さっさと寝なさい!」

 やべ、姉貴だ。帰って来てたのか。っていうかもう2:00じゃん。午前様だな。

「光漏れてるよ! さっさと寝ろ!」

 へいへい、姉貴がうるさいからさっさと寝ることにしますかね。それじゃあおやすみ。また明日。

さて、ここで問題です。この小説は本当にただの意味のない小説でしょうか。ぜひ、考えてみてください。それでは、お読みいただきありがとうございました。

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