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雪に想う
一面の白銀の世界。空に浮かぶのは明日には消えてしまうだろう下弦の月。
ともすれば何も見えなくなってしまいそうなか細い光。
暗闇との境目。
そうはさせないと一面の雪の結晶が煌めく。
しんっと冷えた空気には、突き刺すように冷たい月光が降り注ぐ。
細い針で抉るように。
「そう、あなただったのーーー」
そう言って女はほうっと息を吐いた。
彼女の吐いた息が白く浮かんで消える。
温度のない声。
感情を堪えているような。
吐き出してしまわないように慎重に紡いだ声。
彼女は泣いているのか、それとも笑っているのか。
その顔は糸のように細い光では照らし出せない。
それとも敢えて見せないように伏せているのか。
彼女の顔は、その表情はーーー見えない。