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欠けたティーカップ
「……ん。」
「おはよう。日和。」
「なんでアンタが……」
目が覚めるとベッドの横に瑞樹がいた。
ずっと私を眺めていたのか……
「ねぇ。」
「何。」
「思い出してたんでしょ。」
「!!」
「あの男のこと。」
「っ!!アンタ!知っててっ……!」
顔めがけて降り下ろした腕はいとも簡単に止められてしまう。
こういう時に自らの無力さにあきれるのだ。
「そいつと僕、どっちがいい?」
黒かった。
真っ黒な瞳には光も透き通った感情も見えない。
ただ憎悪だけが満ちた濁った目。
「……」
慌てて私は目をそらしてベッドを降りた。
「ねぇ、答えは?」
私にもわからない。
でも
「……アンタは、私に性的な暴力だけはしてこなかった……。」
振り出した言葉は精一杯で。
「ふふ。そっか。ありがと。」
的はずれな安堵の声が聞こえた。