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茶葉を入れすぎないで
眠りながらうなされている日和の太ももにそっと手を置く。
この小さな体には、幼い頃のあの記憶が未だ染み付いているんだろう。
その蛇のような記憶は、いつも彼女を連れ去ってしまう。
「……君は……」
つくづく不幸だと思った。
僕なんかに愛されてしまって。
日和は脆いと思っていたが、それは僕の方なんだろう。
きっと僕は、彼女がいなくなれば躊躇いなく命を絶つ。
だからこそほかの記憶が、ほかの人間が彼女の記憶を満たしているのが許せなかった。
「どうせ僕が死んでも一年も経てば忘れちゃうくせに……」
僕には君だけなのに。
今うなされているのは誰のためなの。
「僕じゃないでしょ。」
日和。日和。
こっちむいて。
こんなだから僕はいつも君が憎い。