グラニュー糖をひとつまみ
少し不謹慎な表現と、性的表現があります。
「なあ日和、今日俺んち来ない?」
ある日突然、下校中にランドセルを肩に掛け直しながら彼は言った。
しかしいつもの笑顔ではない、少しくぐもったような声と瞳で。
「どうしたの急に、いいの?」
……嫌な予感はしたが、誘われた以上断ることが苦手な性格だったため、誘いに乗らせてもらうことにした。
「……うん、あ!でも全然いいんだよ!日和、忙しいでしょ、明日理科のテストだし……。」
作ったような笑いで、焦ったようにいう彼に違和感が絶えなかったが、初めて彼の家に行けるという楽しみもあった。
「ううん、大丈夫。何時から?」
午前で授業が終わった今日は、放課後の時間はたっぷりとある。
大好きな彼といられるなら、明日のテストなんてどうだって良かった。
「……そっか……じゃあ、1時半……。」
残念そうに笑う彼を見て、迷惑だったのかと少し申し訳なく思った。
今考えると彼はしっていたんだろう。
これから起こることを。
「いらっしゃーい。」
彼の家に入ってにこやかに迎えてくれたのは彼のお兄さんだった。
お邪魔します。と言って頭を下げた後、ゆっくりと靴を揃えていると、ふと視線を感じた。
ぞっとして振り返ると、お兄さんが目を細めて少しの間、私を見ていた。
怖い
私は何故か咄嗟に思ったが、このまま帰るわけにもいかず、ゆっくりと廊下を歩いた。
「あの……雅くんは?」
「あぁ雅ね、今ちょっと出かけてる。もうすぐ帰ってくるよ。」
お兄さんは淡々と答えた。
彼氏……雅くんは時間をすっぽかすような人ではない。
ましてやこんな日に……
「ねぇ、日和ちゃん。」
ぴたっと廊下でお兄さんの足が止まる。
高校生で背の高いお兄さんは私から見ると壁のようだ。
そんな人が止まったのだから、当然私はぶつかってしまった。
「はい?」
ふっとお兄さんは私を横目で見て言った。
「雅と付き合ってくれてありがとね。」
「え?あ、は、はい。」
「だって俺と日和ちゃんが会えたもんね。」
「え?」
「ねぇ日和ちゃんって子宮無いんだよね?」
「!!」
それは
どうして
「じゃあ○○○○○○○○○○○○○○○。」
「!!」
逃げる間もなく、手首を掴まれ、近くの部屋へと連れ込まれた。
ワンピースの肩紐を下げ、キャミソールへ。
その間に入れた手から……
寒気がするような行為だった。
そこからの記憶は痛みと吐き気しか残っていない、
引越しをしたことも、それから男に触れられない体になったことも、今となっては全て曖昧だ。
でも、時々思い出す。
あの容姿の整ったお兄さんに、私は……
「やめて!やだよぉ!!」
トラウマを植え付けられた。