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マドラーはガラス製
パシン……
「っ……」
大きな音が部屋に響く。
その大きな部屋には、左頬を抑えた少女が立っていた。
「ねぇ、今日何回男と話した?何回笑いかけた?」
だんまりと俯いたまま少女は何も話そうとはしない。話したところで次の一発が来るのを理解していた。
「……ねぇ日和。僕はね、君が心配なだけなんだ。君がもし、他の奴と話して、笑いかけて、惚れられでもしたらっ……僕は、僕は……。」
馬鹿らしいと、少女は思った。
生憎私はコイツ……瑞樹が思うような魅力など何も持ち合わせてはいない。
現に今コイツは私に危害を加えている。
どうやらこのお仕置きとやらは、彼の中では私の為と、都合よく変換でもされているらしい。
小さい頃から何故かこの家に住み着いているコイツは、無駄に容姿だけが整っていて気味が悪い。
容姿……その言葉が頭の中に次々と溢れ出し、あの日の記憶を、忌まわしい記憶を引き出していく。
「……!日和!?日和!!」
「……あっ……あっ……やめっ……やめてっ……」