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吹きこぼれた水のありか
「あずさ。」
「日、日和……。」
教室に入って目を合わせるなり、あずさは目を真ん丸にして私を見た。
「そ、それって……。」
「それ?」
「首の……。」
あ。
あの"跡"がやはり目についてしまったようだ。
「彼氏いたの!?」
「……。」
いない、だけどこれをそれなしでどうやって説明しよう。
瑞樹……彼を、彼氏といっていいのか、あの好きでもない彼を?
嫌だよ。
「結構、日和、やるね……。」
「えーっと……。」
あずさが動揺しているのかあきらかだった。
それとともに、その跡をつけた相手をしりたそうでもあった。
「俺。」
「え。」
え。
隣の席からふと声が聞こえてきた。
「だから、俺だよ。''それ''。」
その一瞬、たしかに一瞬、狭い教室の片隅の時間が、たしかに止まった。