第1話 非日常は勇者とともに
時は遡ること現実時間で五分前のこと。今治浩二はゲームのエンドロールをみながら、先ほど終わらせたゲームの余韻に浸っていた。
目に大きなクマを作り、髪はボサボサで、目をシパシパさせていた。
「いや〜このゲームは面白かったなー。特に主人公のキャラが秀逸だったなぁ」
日差しは全く刺さず、ゲームの雑誌や漫画が散乱した部屋の中であぐらをかいていた浩二は呟いた。
浩二が立とうとすると、関節という関節がパキパキと鳴り、長時間同じ姿勢だったことを伺わせる。
ドアの前に置いてあった母親の作ったものと思われる料理を手に取り、部屋に戻っていった。
料理を頬張りながら浩二は
「まさか、酒場で主人公の料理を盗賊に食べられたことの腹いせに町外れの遺跡まで行くことになるとはおもわなかったなぁ」
「あの時はもはやダルさしか感じなかったけどあれはあれで面白かったかな。うん。」
「あそこまでの執念深さだと俺が適当につけたあの名前のこと絶対恨んでるよなww復讐しにきたりしてなwwww」
母親の料理を食べながらありきたりなフラグをビンビンと立てていると、テレビと浩二との間に幾何学的な魔法陣が浮かび上がってきた。
魔法陣からはまばゆい程の光が溢れ、部屋中の本をまきちらす衝撃を放った。
浩二が目を開けると目の前には見紛うことなき勇者がそこにはいた。
中世の騎士を思わせる鎧に、何のためにあるのかわからないマント。レザーのズボンとブーツを履き、振り下ろせば何の抵抗も感じず切れそうな真っ白の剣を携えた、浩二が先ほど終わらせたゲームの勇者の姿がそこにはあった。
恭しく膝をついていた勇者は顔を上げて浩二に向かって一言
「問おう。貴方が私の名付け親か?」
呆気にとられていた浩二はようやく状況を理解したのか投げかけられた問いに対し、
「あ、いや、まぁ、そうなるかな?」
その言葉を受けて勇者は笑みを浮かべて
「ならば、死ねぇい!!!」
ええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!?