序章 ~開幕を告げるコール音~
・・・懐かしい夢を見た。私が彼女と会った時の夢だ。彼女は探偵としては不安だが、人間としてはとても優秀だった。故に、彼女に教えられたこともたくさんある。
「久しぶりに思い出に浸ってみるか・・・」
私は再び瞼を閉じ、眠りへとついた。
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-四年前-
「あぁ、秋人さん、お待ちしてました」
小太りした中年の刑事がこちらに駆け寄ってくる。彼の名前は坂田というらしい。
「では、さっそく現場を見たいのですが・・・」
「ええ、ではこちらに」
現場まで歩いている途中、ふと、視線を感じた。感じた方を向いてみると、現場となった家の二階の窓からこちらを見ているひとりの少女がいた。
「被害者は確か、この家に住む男女ですよね?」
「ええ、そうですが」
「もしかして、若い娘さんがいませんか?年は恐らく14歳くらいだと思うんですが」
坂田は、私の質問に驚きを隠せない様子で答えた。
「どうして知ってるんです!?まだ情報は教えてないはずなんですが・・・」
「いえ、ちょっと気になったもので」
「そうですか・・・」
坂田はとても不思議がっていたが、とりあえず先に現場を見ることにした。
「ここが、現場となったリビングです」
リビングは、いたって普通の部屋である。しかし、窓には直径1.5㎝の穴が二つ空いている。
「死因は二人とも銃殺です。弾丸が貫通してました」
「なるほど・・・銃弾の線条痕はどうでした?」
「それが・・・」
坂田は少しためらって、
「線条痕は調べられませんでした」
「銃弾が潰れてましたか・・・」
「いいえ」と、一呼吸置いて、はっきりとこう言った。
「線条痕がなかったんです」
「!?」
その言葉は私を驚かすには十分だった。
「線条痕がない?」
「それだけではありません、弾丸は鉄で出来ているんです」
「・・・ほかにもありますか?」
「ええ、この弾丸の直径・口径は前例がないんです」
「前例がない?ということは・・・」
「はい、いままでにこの銃弾は作られたことがありません」
私は混乱した。こんな事件はいままでに存在しないだろう。そのようなことを考えていたその時、物語の開幕を告げる電話のコール音が響いた。坂田の携帯だ。
「はい坂田。うん、うん、・・・わかった」
とても深刻な顔をしながら電話を切った坂田に、私は聞いた。
「どうしました?」
「銃弾の詳しい鑑定が終わりました、その結果・・・」
私はある程度覚悟をしていた。だが、その言葉は、その覚悟さえも無意味だった。
・・・・・・・・・・・・
『その結果、あの銃弾には、火薬の反応が一切なかったそうです』
すごくマニアックになってしまいました・・・ 今はまだ何がそんなにおかしいのかわからない方も、最後には納得できる物語にしたいですね(願望)
次回は、秋人と少女の初出会いです!少女は何を想って秋人を見ていたのでしょうか・・・失踪しないように頑張らなくては(汗)
人物紹介
福世沢秋人(男)
32歳(現在は36歳) 独身
職業・・・探偵
警察からの信頼も高く、とても優秀な探偵。仕事ではとても真面目だが、スイッチが切れたり、仲のいい人の前では別の一面も。