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なんなんだこいつは……

作者: 黒猫

『うざい主人公を書こう』そう思ってから1時間、どうしてこうなったのかは作者にもわからない。


 気づいたら真っ白な部屋にいた。


 なんともテンプレな表現に内心で無性に残念な気分になりながらも、一応は礼儀として無意味にどもったりしながら驚愕している風を装っておく。


 本来ならここで夢を疑ってみたり誘拐を疑ってみたりしておくべきなのだろうが、テンプレなスタートにどうせ今後もテンプレが続くのだろうと、どうせ無駄になるであろう考察をするのはやめておくことにした。


 それにしてもこのただ白いだけの部屋、神々しさなんて表現できるかよという誰かの叫びと、使い古された表現だからこそ勝手に異質さとか読み取ってくれないだろうかという手抜き感をひしひしと感じさせずにはいられないほどに何もない。


 もっとこう一切の影がないのにここが部屋だと認識させられるだとか、せめてうっすらと輝きを放っているとか、こうなけなしのアレンジを加えてみましたという努力の痕跡すら皆無の、本当にただ真っ白いだけの部屋である。


 テンプレで始まり、ひねりの無い表現が続く……今後に期待させないお手本のようだ。


 さて、そろそろ何かが現れて自然に心を読んでみたり、何の脈絡もなくとんでもないことを言ってきたりするのだろうが、ここではいったいどんなテンプレを放り込んでくるのだろうか。


 そんなことを考えながら何かが現れるのに備えていると、なんだか困った様子でこちらをうかがっている光の玉が所在なさそうにふよふよと浮いている


 あれは十中八九いつの間にか現れて心を読んでくるタイプだな。


 人型にしなかったのは手抜きと考えるべきか、それともこれから人型に変わって見せたりとちょっと工夫してみた結果だろうか。


 それは追々わかるとして、この後はもうこの辺やりつくされてるから適当でいいや派と、最初が肝心だとなんだかそれっぽい理屈を考える派が主流だが果たしてここではいったいどちらで攻めてくるつもりだ。


 ふむふむ……結果から言うと、これは後者だったようだ。


 人にもよるだろうが、正直ふーんそれでとしか思わない俺にはどちらかと言えば前者の方が嬉しかったのだが、まあそんなことを言っても仕方がない。


 要約すれば神様の都合で異世界行という話であり、理由がなんであろうと当人からすればふざけんな神様なら何とかしろやゴラァ!なのであってリアルさを求めるならここでぐだぐだと煮え切らない主人公でも用意するべきではないだろうか。


 もっとも俺にそんなものを求められても困るのでよくいるテンプレ主人公よろしく、なんか適当に動揺しつつあっさり開き直って神様から面白い魂だとかなんとか言われておく。


 なんだか特別感を演出できる素晴らしい言葉であるが、要するに君って異常者だねと神様レベルで認定されてしまったということである。


 馬鹿と天才は紙一重というが、偉人と変人もたぶんそうなのだろう。


 異世界だなんだと言っても実際に行けば待っているのはつらい現実である。


 現実なんてぶち壊してしまえる異常者でもなければ主人公は務まらないなんて夢の無い話ではあるが、夢は夢の中だから幸せでいられるのであって、真剣に考えるのはやめたほうがいい。


 さて僕の考えた最強のチート(笑)を押し付けられた所で厄介払いとばかりに異世界へと飛ばされてしまった。


 とくに目的もない人間にチートを持たせてもどうしようもないだろうに、こういうことをする神様って実はバカしかいないのだろうか。


 異世界の人間ならとかよく聞くけれど、人の可能性というのは神をも殺すのである。


 よくよくその対象にされるような冴えない日本男子なんか正直大した可能性を秘めておらず、固定概念なんてない現地の人間の方がよっぽど可能性を秘めているはずなんだけれど、神様というのはどうやらヲタク文化というものに夢を抱きすぎているようだ。


 あれは文化の発信者がすごいのであって、それを受信しているだけのその他大勢に妙な期待を抱くのはやめておいた方がいいと思う。


 まあなんだかんだと言ってきたが結局のところ俺は、ちょっと考え方がひねくれているだけのテンプレ展開が大好きなただの一般人であって……


 こういうなんか明らかにやばそうな魔物とかほんと辞めてください死んでしまいます!


 こうして俺の異世界物語は始まってしまったのであった。

※読了までの5分程度を無駄にしたという苦情は現在受け付けておりません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁ。うん、確かに っていいたくなります
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