僕と君の雑談物語《人生》
「人生ってアニメみたいよね」
「え? 何って?」
「だから、人生って」
「もう一度言わなくていい」
「聞き返したのはあなたの方じゃない」
「いや別に聞こえなかった訳じゃないから。ただちょっと真意を図りかねただけで」
「えーとね、例えば、あなたが朝6時半に起きるとするでしょ」
「え、何で俺の起床時間知ってんだ」
「細かいことは気にしない」
「全然細かくない。下手すれば俺のプライバシーに関わる問題だ」
「何はともあれ、あなたが起きた瞬間に、それまでの『寝ていたあなた』は終わって、新しい『起きているあなた』が始まるの。死んで、また生まれ変わると言ってもいいかもね」
「はあ」
「朝ご飯のパンを食べれば、『空腹だったあなた』が終わって『お腹いっぱいのあなた』が生まれる。着替えれば、『パジャマだったあなた』が終わって『制服のあなた』が生まれる、と」
「そこまででいい。もうぐちゃぐちゃになってきた。つまり?」
「つまり、人間は一瞬一瞬違うの。一瞬のうちに何度も死んでは生まれてるのよ。ただその『自分』は少しずつ似ていて、あまりにも高速で入れ替わっているから、同じように見えるだけ」
「はあ」
「だから人生とか時間ってアニメみたいね、って話」
「なるほど分からん」
「分かんないの?」
「いや、言ってる意味は分かるんだ。ただ結論がよく分からない」
「えー何でよ」
「……で?」
「……はい?」
「君が何の策略もなく、そんな哲学的なことを言うとは思えない。何を企んでる?」
「……べ、別に何も?」
「その沈黙が疑わしい」
「…………要するにアニメは素晴らしい文化だと言いたいのです」
「却下」
「えー!?」
「ほぼ毎日TS●TAYAや●ニメイトやブックオ●に入り浸ってるような人が言うんじゃない」
「あなたにも分かってほしいだけなのにー」
「だから却下」
「つまんないの」
「人を勝手にそういう道に入れようとしないで下さい」
「ちぇー」